つぶやき シヴィライゼーション 月や星に手を伸ばすというフレーズはよく聞きますが、実際に道端で月や星に手を伸ばしているひとを見たことがありません。同じように、自分はひとりだと嘆いているひとは、だいたいひとりではありません。自分を花のつぼみにたとえるほど思い上がってはいませ... 2025.01.16 つぶやき
小品 逢瀬 風船は青空に飛んでいって、ふくらませたわたしの息がそこかしこに隠れています。どんな手袋をしても指先だけ寒い国はここです。そこでは飴玉が一日にひとつだけもらえます。教会の背丈は少し低くて、水をそのまま飲むことは禁じられていました。通貨はアセロ... 2025.01.13 小品
つぶやき インフルエンザ 今までいくつ十字路で右に曲がってきたか憶えていません。たまには左に曲がれるときがあるのかもしれませんが、わたしはいつも右を選んできたと思います。左に曲がった方がいいときがあるのもわかりますが、わたしはいつも右を選んでしまいます。それは損だっ... 2025.01.11 つぶやき
つぶやき おうちの日 まいにちまいにちそこにきれいな花を咲かせるようなベッドメイキングをしようと心がけているのですが、どんな香りを込めるかのイメージがいまだにうまくつかめません。今すぐにいちごを食べないと張り詰めたくちびるがはじけてしまいそうな日と琥珀糖を作るた... 2025.01.06 つぶやき
つぶやき あなたとわたし 白紙よりも文字が書かれた紙の余白の方が静かな気がします。地下鉄の階段を早足で降りるときに吹き上げてきた風が紙を飛ばして、その時に散らばった文字がこれから降る雪の結晶のまんなかになります。文字は文字だけでは音にならないから、雪は静かに降るでし... 2025.01.03 つぶやき
つぶやき 謹賀新年 一年の始まりには特別な言葉をしたためたいもの。そう思ってスマホに向かって、もうどれくらい経ってしまったのでしょう。昨日はあれから慣れないお酒を飲んで除夜の鐘も聞かずに寝てしまって、それで変に早く起きてしまって、なかなか書けないまま時間ばかり... 2025.01.01 つぶやき
つぶやき よいお年を わたしの手をどうか見ないでください。いくらあたためてもクリームをすり込んでも血色が悪くて、誰かの視線が触れるたびにいたたまれなくなって、消えてしまいたくなるのです。この文章もこんな手で書いているのだと思うとほんとうに申し訳ないです。けれど声... 2024.12.31 つぶやき
小品 夜空 いちごがたくさん入ったバスケットにあこがれていたわたしは、そんな願いが似合わなくなった年になってもまだ夜を見上げている。田舎は空気が澄んでいて星がきれいだというけれどわたしは田舎の空を知らない。けれど東京だって星は見えるよ。窓ガラスを拭く人... 2024.12.29 小品
つぶやき あかり イルミネーションの境目、居心地が悪そうに靴紐を結び直す人がぼやけて見えます。黒とかグレーの色をした人が多い季節、肩をすくめて道の端っこを歩く人、道のまんなかを腕を組んで笑いながら歩くふたり。それはうらやましい? カットがうまくいかなかったよ... 2024.12.25 つぶやき
ニュース 朝の川 朝方に歩く川にはさざ波も見えて、水が流れていることがわかった。ゆらゆらと動くその水底は見えなかった。飛び込んだらどうなるんだろうという想像が朝日に反射してリアルによぎっていった。人間だからしかたないという免罪符は誰しも使うもの。そう書いてお... 2024.12.21 ニュース