つぶやき

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朧月夜

子どものころ朧月夜を初めて見たとき無性になにかを話したくなって、おかあさんに(なにを話したか全然憶えてないけれど)すごくたくさんそのときの月の様子を伝えようとしたのが、たぶんわたしの最初の自己顕示欲の顕れだと思います。明るくもなく暗くもない...
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お酒

部屋にひとつだけぽつんと置かれた木の椅子の写真が好きです。冬の水は氷のように冷たかったけど、アップデートされたアプリにいつの間にかわけのわからない機能が追加されたことに戸惑ってしまいました。なにもお願いしてないのに花に水をやったから感謝しろ...
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シヴィライゼーション

月や星に手を伸ばすというフレーズはよく聞きますが、実際に道端で月や星に手を伸ばしているひとを見たことがありません。同じように、自分はひとりだと嘆いているひとは、だいたいひとりではありません。自分を花のつぼみにたとえるほど思い上がってはいませ...
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インフルエンザ

今までいくつ十字路で右に曲がってきたか憶えていません。たまには左に曲がれるときがあるのかもしれませんが、わたしはいつも右を選んできたと思います。左に曲がった方がいいときがあるのもわかりますが、わたしはいつも右を選んでしまいます。それは損だっ...
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おうちの日

まいにちまいにちそこにきれいな花を咲かせるようなベッドメイキングをしようと心がけているのですが、どんな香りを込めるかのイメージがいまだにうまくつかめません。今すぐにいちごを食べないと張り詰めたくちびるがはじけてしまいそうな日と琥珀糖を作るた...
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あなたとわたし

白紙よりも文字が書かれた紙の余白の方が静かな気がします。地下鉄の階段を早足で降りるときに吹き上げてきた風が紙を飛ばして、その時に散らばった文字がこれから降る雪の結晶のまんなかになります。文字は文字だけでは音にならないから、雪は静かに降るでし...
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謹賀新年

一年の始まりには特別な言葉をしたためたいもの。そう思ってスマホに向かって、もうどれくらい経ってしまったのでしょう。昨日はあれから慣れないお酒を飲んで除夜の鐘も聞かずに寝てしまって、それで変に早く起きてしまって、なかなか書けないまま時間ばかり...
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よいお年を

わたしの手をどうか見ないでください。いくらあたためてもクリームをすり込んでも血色が悪くて、誰かの視線が触れるたびにいたたまれなくなって、消えてしまいたくなるのです。この文章もこんな手で書いているのだと思うとほんとうに申し訳ないです。けれど声...
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あかり

イルミネーションの境目、居心地が悪そうに靴紐を結び直す人がぼやけて見えます。黒とかグレーの色をした人が多い季節、肩をすくめて道の端っこを歩く人、道のまんなかを腕を組んで笑いながら歩くふたり。それはうらやましい? カットがうまくいかなかったよ...
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見るもの

みなさんいろいろなものを諦めてきたことと存じます。てのひらからこぼれていく色とりどりのかけらをただ見つめることしかできなくて、あんなにキラキラしてるのにどうやっても取り戻せなくて、せわしない日々に追われて悲しむ時間もなくて、もういいやとなっ...