2025-02

つぶやき

まるいもの

ちいさいころ、わたしは誰かの特別になれないんだって気づいたときの、がっかりしたような、ほっとしたような音に似てるから、金属同士がぶつかったときの音がすきです。わたしの特別をしまう引き出しはひとつしかなくてすごくちいさくて、そこに入れるものを...
小品

水の音

月がきれいですねと誰かがいうより前からずっと月はきれいだし、あなたのことがすきですという前からずっとあなたのことがすきです。あなたが振り向いたときに時計の針がぴったり合って、そこから向こうに抜ける道を歩いていたら空気がぱりんと割れました。わ...
つぶやき

かなたへ

わたしは空を見あげているけど、空はなにを見あげているんだろう。それはきっとさえぎるものがない宇宙に広がる満天の星と、その星にわたしたちが託したどうでもいいごみのような願いや思い。スペースデブリっていうんだって。たまにぶつかるたびに空き缶が鳴...
つぶやき

恋の話

寒いね。今日は雨だから、恋についてお話ししましょう。ひとは好きでもないひとと恋に落ちることができるから、わたしの家の窓から見えるあの通りを歩くひとはかならず恋に落ちます。今日もすれ違ったふたりが目を合わせた瞬間に恋に落ちて手をつないで寄りそ...