つぶやき まるいもの ちいさいころ、わたしは誰かの特別になれないんだって気づいたときの、がっかりしたような、ほっとしたような音に似てるから、金属同士がぶつかったときの音がすきです。わたしの特別をしまう引き出しはひとつしかなくてすごくちいさくて、そこに入れるものを... 2025.02.10 つぶやき
小品 水の音 月がきれいですねと誰かがいうより前からずっと月はきれいだし、あなたのことがすきですという前からずっとあなたのことがすきです。あなたが振り向いたときに時計の針がぴったり合って、そこから向こうに抜ける道を歩いていたら空気がぱりんと割れました。わ... 2025.02.07 小品
つぶやき かなたへ わたしは空を見あげているけど、空はなにを見あげているんだろう。それはきっとさえぎるものがない宇宙に広がる満天の星と、その星にわたしたちが託したどうでもいいごみのような願いや思い。スペースデブリっていうんだって。たまにぶつかるたびに空き缶が鳴... 2025.02.05 つぶやき
つぶやき 恋の話 寒いね。今日は雨だから、恋についてお話ししましょう。ひとは好きでもないひとと恋に落ちることができるから、わたしの家の窓から見えるあの通りを歩くひとはかならず恋に落ちます。今日もすれ違ったふたりが目を合わせた瞬間に恋に落ちて手をつないで寄りそ... 2025.02.02 つぶやき
つぶやき 種火 いつだっておかしいのはわたしだって純粋な宝石のようなアドバイスをくれるひとは、その宝石の角や冷たさで傷つくひとがいるのを知らないし、それがやがて汚れてそうして色あせた宝石をかかえただけのあわれなひとになっていくのを見たいと思っているひとがい... 2025.01.30 つぶやき
小品 上を見て 特定のだれかにではなくみんなに向けていつもありがとうっていうひとはなにか心にやましいことがあるからだって、いつもなにかを否定してばかりいるわたしがそんなことをいう権利はないけれど、同じ未来を見たいっていわれても声の彩りがぜんぜん違うから、そ... 2025.01.27 小品
つぶやき 左側 キッチンの壁に貼った両面テープがうまくはがれなくて、今日はこういう日かもと思いながらスーパーに行ったらレジの人と話したときに声がかすれて恥ずかしくて、そんなときに冷凍うどんとねぎをかごに入れていたら頭のいいひとはどう対応するんだろうって、こ... 2025.01.24 つぶやき
つぶやき 朧月夜 子どものころ朧月夜を初めて見たとき無性になにかを話したくなって、おかあさんに(なにを話したか全然憶えてないけれど)すごくたくさんそのときの月の様子を伝えようとしたのが、たぶんわたしの最初の自己顕示欲の顕れだと思います。明るくもなく暗くもない... 2025.01.20 つぶやき
つぶやき お酒 部屋にひとつだけぽつんと置かれた木の椅子の写真が好きです。冬の水は氷のように冷たかったけど、アップデートされたアプリにいつの間にかわけのわからない機能が追加されたことに戸惑ってしまいました。なにもお願いしてないのに花に水をやったから感謝しろ... 2025.01.19 つぶやき
つぶやき シヴィライゼーション 月や星に手を伸ばすというフレーズはよく聞きますが、実際に道端で月や星に手を伸ばしているひとを見たことがありません。同じように、自分はひとりだと嘆いているひとは、だいたいひとりではありません。自分を花のつぼみにたとえるほど思い上がってはいませ... 2025.01.16 つぶやき