やりたいこと

ひとになにかをしてあげるのあげるっていうことばがもう間違ってるって思うのはなにか傲慢な気がするのだけど、なにかをしてあげたことへの見返りを求めるひとがいるのはしかたないのです。でもあなたに効く薬をつくることができたらって、そうあなたになにかの言葉を届けたいっていう思いは間違ってないはずだと、ずっとどこかでガラスが割れる音がしててふるえながら今日もだれかがただで配っている気持ちに慣れてしまったことを後悔して、わるいのはたくさん箱を開けてきたのになにもはいってなかったのを見すぎてしまったせいにすることにして、エスカレーターではぜったいに歩きたい派なのを隠しながら息をしてます。

やまない雨はないっていうとかっこいいような気がするけど変わらない信号はないって言い換えるとがっかりしてしまわないかってずっと心配でした。ふるさとって呼べる場所がないことに引け目を感じることはないってその手を包みこんで熱をつたえたいって思いはうそじゃないことを信じてほしいから、(アイロンがめんどうだけど)服をぜんぶ綿100%でそろえるって、夜の部屋のうしろの方でなにかが落ちる音が聞こえたら次こそはこわいのをがまんしてかならず振り返るって、黙ってたらわからないことがあるっていうことすらわからないならわたしがいま教えてあげます。このナイフがあなたのからだに突き立ったらいやでもわかること。

火花を見たことがありますか、ライターとかそういうのじゃないほんとうの火花は灼ける鉄よりも力強く目の奥に散って脳の手前のほうに焼き付いて、秘密を隠すのはあの本の続きを読みたくて少しずつずれていくドラムの音に合わせきれないページをめくる爪が溶けていってもいいって、ねむれないこの世の中はずっと昼間だって思ってバスタオルを抱きしめて目を閉じようとしてるのにだれもいないからたのしそうにしゃべるのはわたしではないわたしだってわたしが振り返って指さすから、わたしはわたしをわたしだというわたしにそっとちいさな舟と櫂を手わたして、岸辺からわたしではないわたしに手を振ってふと昨日のことを思い出しました。そういえばわたしはひとを刺したのでしたっけ。