冬の庭に遊ぶまっかな子どもたちにはやさしくしなければいけないから、寝室のベッドと窓の間のすきまスペースにどんな椅子を置こうかってわくわくする時間を邪魔されても文句は言えません。棚に観葉植物を飾ると落ちるのがこわくて落ちつかない気持ちにふたをして日常をすごすのがえらいひとです。家のなかはあたたかくて、もうすぐ雪が降るかなと窓を覗こうとしてそういえばさっきなにをしようとしてたんだっけと止まってしまうその瞬間をたいせつにしたいっていうのはあまりにわがままですけど。
「すきです」とつぶやいた息を入れた小びんを今日一日持ち歩いてみました。くるみのような気持ちがころころとその中でまわっているような気がして正直はずかしかったです。うっかり落として割ったらとなりのひとに聞こえてしまわないかと気が気ではなくて、きっとペン先にそんな気持ちが伝わって今日わたしが書いたわたしの名前は明日になったら違うひとの名前になると思います。ひとり暮らしになるとひとりごとが多くなるなんてうそでした。だって立て膝で座ってからだを丸めるとことばなんてぜんぶ溶けてしまう。
引っ越してきたときにベッドにこもろうと思って買ったランタンがこないだ棚の奥から出てきて、やっぱり朝に食パンを焼いてバターを塗って目玉焼きといっしょに食べられるのはごく限られたひとしかできないことだったんだと思いました。おうちの中ではじぶんにやさしくしていいはずですが、傘は1本あればいいのにいつのまにかたくさん玄関に立ててあるひとや、猫のプリントのティーカップとソーサーをたいせつにするひとは、きっと洗面台のまわりがちょっとごちゃついているから、これからわたしといっしょに片づけませんか。