わたしの手をどうか見ないでください。いくらあたためてもクリームをすり込んでも血色が悪くて、誰かの視線が触れるたびにいたたまれなくなって、消えてしまいたくなるのです。この文章もこんな手で書いているのだと思うとほんとうに申し訳ないです。けれど声だと思っていることがうまく伝わらないような気がするのです。葉っぱが全部落ちた枯れ木のような手は年末のどこかさびしい雰囲気にすこし似合ってるのが救いです。
手から散っていった葉っぱはくるくると回って落ちて誰かのあたたかい古着になります。かさかさと心地よい衣擦れがおすすめの一品です。初めて買ったメーカーのビスケットがあまり甘くなかったときのような色をした砂漠をひとりで歩いていると暑くて、冬なのに服を脱いでしまって、わたしのポニーテールに混じったリネンが一本だけ滑り落ちてまた葉っぱになります。誰かと何かをシェアすることは幸せなのだろうと思いました。
もう今日で今年は終わり、明日から新しい年が始まります。わたしはこれから今年最後の買い物に行き、今年最後の洗濯をして、今年最後の空を見上げて、今年最後のごはんを食べます。お雑煮用の鶏肉はまだ売ってるでしょうか。街がさびしいから今日落ちる葉っぱは特別で、それを踏むために少し遠回りして買い物をしましょう。スニーカーよりもブラシをかけた靴の方がいい音がしそうです。
それでは、また来年。
追記
鶏肉は小さいパックが売り切れで大きいのしかありませんでした。年始は鶏肉ばかりになりそうです。