インテリア

家に楽器を置きましょう。いいこともわるいこともパッセージにできるから。きらきらと点滅するハンカチを振って水平線を越えてしまったなにかに向き合おうっていう気持ちは階段を上り切って次に行くたびに左にずれていって、取扱説明書に書いていないからってあいまいにほほ笑むひとにかける言葉が見つからないまま管楽器の音だけそこになかったことに気づいた花冠が散った後にまとめた髪がほどけても眠気が消えることはなくてすぐになくしてしまうのです。もう手元にないことは。

家に写真を飾らないようにしましょう。いいこともわるいことも忘れられないから。わたしのためにもういちど疲れてほしくてうたってみたけどひとつぽつんと点いたろうそくはずっと消えなくて、横断歩道を渡るときは白いところだけを踏んでたのに、傷がほしいなあってにこにこしながら階段の先に消えていくのを止められなかったのがいいことなのかわるいことなのかわかりませんでした。どこに落ちていったのかなって座り込んでただ明かりを見つめていたら車がやってきました。

家にぬいぐるみを置きましょう。いいときもわるいときも汚れていくから。夢の中でしあわせになる夢を見て誤解されたまま、そろそろ髪を切らないといけないのになにも変わらないとかそんなことばかり、なにかをしなきゃならないのは自分だけでいいってまさか自分がだれかに手を差し伸べることができるって勘違いしてませんか。だれかを汚くするぬいぐるみは毎日クリーニングに出して、きれいなものを探して歩いてるときにガラスに自分が映っても気にしなくなったでしょう。もう向こうにあることは。