コーディネート

部屋の模様替えって楽しいのでしょうか。ナチュラル、モダン、北欧、和風、あとほかに何かそういう感じのテイストをイメージして、ベース、メイン、アクセサリーとかテーマカラーを決めて、モチーフを選んで、その前に真似できそうな部屋の写真を探して、出てきた家具の値段に悩んで、結局サイズを測るとこまでいつもたどりつけなくて、なんだか自分がほんと何もできないバカな人間だと思って嫌になってしまうのです。SNSで楽しそうにアップされてる部屋の写真ってだいたい小物が多くて、あんなにたくさんの物を棚や机に置いたら日々の掃除がたいへんすぎて気が狂うので(なんで部屋にこんなに埃が積もるのかって毎日思う)(小物入れの埃は異常)(ペン立てすら買うの迷う)、観葉植物に囲まれた部屋を見るたびに人間としての徳が違うんだなと思って、そうやってやりたくない理由を積み重ねていく自分にますます嫌になって、部屋にも自分にも埃が積もって、もう埃が雪だったらいいのに。そうしたらきっとわたしは埃に埋もれて凍死するんです。

模様替えの前にまずは部屋を片づけようと2年前の雑誌をまとめてたら指を切りました。2年前の自分に否定されたような気がしました。花冠をかぶって春めいたその雑誌の表紙に嫉妬したって仕方がないけれど、指にすがすがしいほど一直線に入った傷から芽が出たり花びらが零れ落ちてこないかなと変な期待をしてしまいます。冬の入りに見る春の雑誌は不安なくらいにパステルカラーで、花であふれかえっていて、口を少しだけ開けて撮ってる写真ばかりです。京都の街をそんな恰好で歩くんですかと思うような写真は、わたしのセンスは今まで正しかったことなんて一度もなかったことを思い出させて、雑誌の通りにした方がいいんだと、同情と憐みに満ちた視線が怖くて、わたしは部屋の電気を消して口を閉じました。