未読のメールと留守電を残したまま新しい年を迎えても特に変わったことはなくそのまま表に出ると真っ暗なお店ばかり、舞台に走り去った車を追いかけても流れる筆の先からぽつぽつと墨で汚してしまって、昨日までのこころに残っているひとが出ていけばきっと息も切れなくなるのに。そうして勢いよく立ち上がるには読み取れない積み重ねが多すぎますが今年はただひとつだけを祈ります。これから朝に線を引かなくても分かれていくものへ、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
一年の初めにたいせつなものをたくさん抱えてもどうせあと365日のうちにぽろぽろと落としていくのですから、持ち物はすくない方がいいでしょう。マイルストーンの長い長い行列から抜けてしまえば広すぎて迷うくらいに、ごはんがなかったら作ればいいし、替えの服がなかったら買えばいいし、だれかが落とした元はたいせつだったものが風に舞ってそこらへんに転がっているのをぼんやりとながめるのはきっとしあわせなことです。それを拾って磨いたら次のだれかのために道ばたに置いていきましょう。
たぶん300円くらいの切符で散歩した薄く赤い池のほとりでターンしたい気持ちを吐き出さないよう一生懸命にこらえていました。さっき見たような気がしますけどわかりやすい幸せとひとに関係ない幸せならどっちがいいかなんて決まっているから体をベッドに投げ出して、台所からずっと続く低音にぐらぐらしない一日を喜ぶのはしゃくだから入りますという声にどうしてひとつだけお肉を口に運んでしまったのだろうと悔やんでも今年は始まってしまったのでした。ねえ、いい年になりそうですよね。
