ボート

雑踏の角をまるく曲がって頭を振ってちょっと前の考えごとを追い出してかがやく噴水のフレーズは楽器といっしょに途切れないようにレーダーに映らない雨を横切ってゆるい明日のわたしをためしています。コルクのコースターはあふれる蜜を吸いこめないままそこにない光をめざして芽吹いたアンケートに誠実に答えたのにだれかを好きでいるからできないことが増えていってぽろぽろとこぼれて動けなくなって、それでも振りかえったかかとがいちばんすきな季節をあなたにたずねているのを聞かなかったことにはできないのです。

あとをついてくる葉っぱが風に吹かれてまとまらない髪をわらうからちいさな夜空に過ぎていったちょっと辛めの昨日に重ねたいトッピングを選んで見返してあげましょう。ただ背を伸ばしたままひとことも話せないキャンバスに置かれたいくつもの吐息がぽたぽたと色づくころに川沿いのくもったベンチであたりまえのようにお似合いのふたりはすきな曲がかかるのを待っているんだって、しずかなやさしさは片目だけくっきりとずれたヘアオイルのかおりにつつまれて、その願いが叶ったらもっとほしくなるのに。

すべての音を消したあとに耳のちかくでじりじりと鳴りつづけるそれを沈黙といいます。じっと座ってるのにあきた木かげはあなたとあなた以外のひとが石を踏むのをずっと黙っていましたから来るっていって来ないならもう来ないっていってとか子どものわたしがにぎりしめていた絵筆のぬくもりはいつまでも残りつづけてクローゼットの奥にひっそりと息づいて、スイッチを入れたら動き出すパズルの海はあんなに青かった仮面をはずして夜のわたしを飲みこもうとするのです。