最近ねじを巻く音をプリントしたTシャツが売れてます。それは幸せを幸せと気づかないひとしかわからなくて、トンネルをずっと走っていった先の出口の光がこわくて出たくないって思うならきっとすごくやわらかい着ごこちだから、目がたくさん描かれたエレベーターがちょっと速めに落ちるからってとまどわないでください。たくさんの風船がはねる部屋がたのしかったのはもう昔の話で、今はその向こうからなにが出てくるのかを気にしてしまうひとへ、非常階段を歩くときには気をつけて。もうずっと前に、耳鳴りがするっていっていつも大きな音で電子の和音を聞いていた机がぽつんと置いてあります。
ひとはまるいなにかに勝手に意味を見出してしまうので、ぺらぺらした歯車の白いニット帽の話をしましょう。遠くでも近くでも木とか森の映像をぼんやりさせるとからだの中のなにかのレントゲン写真に見えるように、山とか湖と空気の境目にこらえ切れなくなった白い歯車は落ち葉のようにしあわせを散らして夜の博物館の一階のホールの明かりになります。まるはさんかくと結婚してしかくになってじぶんを見失って、にぶい方がしあわせだなんて決していえないのに無責任に、後ろを向いているうちにどこかに行ってしまって、そんなことといっしょに吐き出しました。
ドラム式洗濯機の目のところがじっと見つめてきてなにかいいたそうに、目の前を通りすぎたしあわせを洗って返してきました。なにかなつかしいことを思い出すときはなにか間違っているときだから、ときどきはひとりになる必要があるかもしれないけどそれが間違ってるときの方が多いんだって、広めのつばの帽子をかぶって視線を隠してずっとひとりで間違い続けてきたからそう思うのです。窓を開けなければよかったのに、壊れた車とピアノの音の目薬をぽたんと落としてゆれる視界で外をよけいに外のようにするから友だちがいなくなります。