正面から左にターンしてひるがえった白いワンピースの裾が右に残るとそこに空白ができて休符になります。リネンの休符は踊りつづける右側にいくつかならんで、鳴らない音はオフホワイトの生地の横糸を通してそっと芝生の上に、足あとから時間差で過ぎていったいくつかのため息がひとりきりの窓際の日差しの裾をつかんで消えました。袖にとまった恋が薄くかすむ空に散らばってもう戻れなくて、ひとひらの風の左側の余白になにもこぼしたくなかったから、髪はなびくのをやめたのです。
十三番目の星座の線がつながったら向こうの丘から同じ数の蝶が段々に下りてきて、差した傘の上ではねて音符になります。コットンの音符はそっとひたした指にとけて、もうすぐ雨がやむって気づいたら水のない川に渡る舟のあとをたどり、しっぽの向いた方角にきっとカフェがあるからさくさくのクッキーで濡れた五線譜を軽やかに迎えましょう。乾いた傘を閉じて時計を動かして、隠した吐息を回る舟の後ろの余白に置いて、濁点のない食材だけで作ったランチをゆっくりといただきます。
夜中にちかちかと点滅するシャワーの上になにもないのが気になって古い本の香りを置いてみました。読書好きな星が勘違いして降ってきて流れ星になると、シャワーから光が流れ出していままで輪郭があいまいだったことばが紙の上で散らばって文字になります。それをフライパンで軽く炒めて粗熱を取って星屑といっしょに粉気がなくなるまでさっくりと混ぜたら、別れを告げるそのときに目をそらさないようにじっくり焼いて、電灯は暗いまま、糸でつむいだ本の余白の微笑みに気づいてくれるようそっと祈るのです。