白いサンダルに日が差してななめになった鈴が鳴ったらアームカバーを忘れずに、葉っぱのかたちをしたかばんにしましまのなにかを隠してためらう初夏の向こうになつかしいソファが見えます。晴れた空はみっつの青色でできていて、乾いた砂が入ったプランターがなにかの答えをほしがるように緑色を重ねた棚を指さすとその縁に咲く黄色い花がやさしくかがられて留まりました。風船は風に吹かれても飛んでいかないまま、信号待ちのつばめが片方の羽を広げて雲をついばもうとしきりに首を伸ばしています。
逃げた雲があたりを見回してほっと息をついて夜のベッドで眠りについたら翌朝にはもう空は秘密に隠されて、その向こうに見えるなにかがあるなら昨日のうちに見ておくべきでした。曇りの日のやわらかい光の方が似合う服があってやさしくなれるなら、こういう日にだれかと再会してもあいまいに笑えるからうまくやりすごすことができるはず。ぼんやりしたまま椅子に揺られていつの間にかふわふわの半熟になった胸のうちを濡れた雲の上に置いて冷ましたらそっとつつみこんでお皿に載せます。
ふと雨がひとつ灯って、やがてぽつぽつと淡く底から上にまるい紋がささやいて、それに遅れて遠くの景色が立ち止まって鳥たちが鳴きやみます。きっと初夏の後ろ、梅雨に咲く花は雨粒のようににじむからその季節を選んで、こぼれる露はずっとなにかをあきらめてきたひとの心を惑わすことばをつぶやいてただ消えていきます。赤い傘をたたんだ切符売り場が混んでいる駅の入口で古いフィルムのように途切れる砂に吹かれた雨音はひとつひとつ違うから、泣いてる夜もそばにいてくれると勘違いさせないでほしいのです。