周回

服を着替えるたびにうすくうすくかすれていく週末の秘密はカーテンの影で息をひそめて、むかしむかしの物語は最後のおしごとを果たすために忘れられていきます。木製のかせくり器にかけた糸のやわらかなはじまりからおわりまでをずっと指でたどると4%の不純物がしたたり落ちて待ち合わせのことばにつつまれたつぼみのぬくもりはそのままに、花壇に沿って遠回りしたコーラスが空っぽの美術館の窓枠の代わりに飾られていました。雨上がりにさかさまに映らない水たまりと目を合わせないように。

凍ったぶどうを繰り返して重なったガラスの器のふちにひとつ添えて、お客さまが待っているソファで目覚めるころには煉瓦のアーチにからまった夢が割れてとろけたシャーベットも合わせてお持ちしますね。せっかく椅子の作り方を知りたくてたくさんメモを取っているのにきれいすぎるページの折り目で鳴り続ける電話のベルがためらうことなく羽根枕を満たしていきます。それはもう使われなくなったものがただ置いてあるだけの絵をまっすぐ見つめるために使いたいのです。

やまない雨の奥に瞳は触れないで、似てるねと言われても口を開かないまま遠く遠く離れるベースラインに心を乗せていつまでもいないひとのとなりに無邪気に座りたかったのです。くず練りのお菓子のような夜が明けたら青い鳥が帰ってくるから、教えられたとおりに控えめな返事をしただけでは大切に抱きしめていた文字の香りに気づいてもらえなくて交わした手紙にどこまでもついていこうとした切手もやがてはがれてしまいました。あきらめたものがため息だけだったら寄りそう気持ちは揺れなかったのですけど。