左足から階段を降りると縦も横も空っぽのカップの中で、砂時計に天井を張っておなじものを持ってきても細く深い時間からもう来なくていい方に落ちていく小さな笑い声が聞こえなくなります。飛ぶ灯台の針が少しずつ落ちていく粒を消しては足して、じっとそこから動かない視線にひびが入りはじめて、不揃いな傘を埋める時間が取れなくて、考えてるときに手を口元につけるくせは治らないまま、一日の終わりのルーレットが止まるときに景色が変わらないことに安心しているならもう近いかもしれません。
やかんが鳴るのを待っている間に売りに出した涙にいい値段がついたみたいで、これから泣いていれば箱に入れた首輪が毎日のごはんになります。だれかにプレゼントしたガラスの瓶がめぐりめぐって神さまの御もとに、こころからの祈りをささげて穴の開いた屋根からあるはずのものをなくしたら指がすこしだけ冷たくなって、道ばたに座り込んでただ上を見つめるだけのひとからなにもかも奪ってしまえば下に降ろしてもらえるのでしょうか。ぼんやりしたかけらとその先の爪あとにほこりが積もって風に消えていきます。
いつまでも浮いたままの水が沈む島に点々と流れる門の方へ、ちいさな器にどうしても収まらないからだれかの瞳を取りにいく船に乗って、広がった羽はそっとおかえりって、触れただけで紫色が細く震えて、深く垂れた頭にかぶせた画布がどれだけ洗ってもきれいにならないのはだれのせいでしょうか。しあわせのほとんどは宛先がわからないまま戻ってきて再配達の電話もかかってきません。ためこんだそれはなんの役にも立たなくて土の中で、右足から階段を上って力を込めて、きっと前にも後ろにも進めなくなります。