恋の話

寒いね。今日は晴れだけど、恋についてお話ししましょう。

恋は落ちるものですが終わるときには冷めるだけで昇ったり上がったりはしませんので一度落ちたら二度とそこから戻ってこれません。だから一時の気の迷いで落ちたりするとあとがたいへんなのですが、このところ近くのショコラトリーで新作を試食したひとが次々とほほを染めて手をつなぎ始めるらしく土日はいつも満員です。店から出ると正気に戻ったように手を離して別々に歩いていくのですがそれでもいいからひとの目を見つめたいひとはいるみたいで、恋なんてちょっとしたきっかけで落ちておいた方が得なのかもしれません。

ささやいてもわからないふりはもうおしまい、愛でも恋でもいいからただ動けない自分を救ってほしかったなんて甘えているようなひとの手を引いてくれるひとはいません。見つけてくれるひとを見つけないといつまでたっても最後から二番目の恋が幕を下ろさないまま、どこまでも離れない夢が交差点ですれ違う涙のひと粒をぬぐってくれることもありません。傘もささずに走ってきたひとの服があなたの濡れた袖とおなじ色に染まることはないんだってとっくにわかっていたはずでしょう。

かさねるのは日々とか時間ではなくて指の先からにじむはつ熱

生まれたときにうれしくて泣いたひとはおとなになったらずっと守ってほしいひとになって、生まれたときにかなしくて泣いたひとはおとなになったらずっとついてきてほしいひとになります。たいせつなものだから痛いなんてうそだってわからないまま恋をしてしまうのは前のひと、恋を見つけたら責任を取らなければいけないと思ってしまうのは後のひと、けれどふたりとも子どものころに恋をしようって指切りをしたひとはいなくなるのです。とおいところにいるひとへ、ひとりでは守れない約束は歩き続ければやがて旅立つのでしょうか。

そうしてやぶられた約束の切れはしはめぐりめぐってあなたのもとへ、ひとはひとつではなくいくつもの星がかさなってかたちになったものだから、もしそのかがやきにひびが入ったら恋をひとつではなくかならずふたつ与えてください。もしその恋がひとつなのかふたつなのかわからなくなったら一日おくれてもいいのでひとつの恋にためらう月の光をふるいにかけてふわふわにあふれるほど与えてください。でもひとつだけ注意して、決して愛をあげてはいけません。その瞬間にあなたを見てしまうから。

さむいって思っているひとたちみんなだいすきです。