おはよう、寝れた？ 朝いちばんですりおろした空からしたたる雲のしっとりなめらかポタージュができてますよ。もうすぐひびが入ってしまう窓の外の砂浜にねこが座っているみたいだから後でさわれるチャンスかも。イルミネーションの季節、きらきらしすぎる時間からみんな1分だけ切り取ってアップするからいつの間にかスマホの中の一日は24時間を超えてしまってちょっとくらい寝坊したっていいかもって思いたくなるのもわかりますけど、どうしようもなく止まってくれない風にだまされていつもの角を曲がれなくても知りませんよ。
いくらかきまぜてもなかなか溶けない気持ちをあたたかい木のさじですくって味見をしながら退屈しない毎日に悩んでいるふりを覚えましょう。夜空をめぐる流れ星のあいさつをひとつふたつもぎとって昼下がりまで冷水にさらしたらぱちぱちはじけてフルーツとよく合います。黙っていれば気にしてくれるとか隠した思いやりはきっと返ってくるとかそういうのはステンレスのボウルにからからと転がって、失敗したオムライスを子どもたちが食べてくれなかったのでおなかいっぱいのねむたい午後が始まります。
おはよう、起きた？ 月あかりを目の細かいふるいにかけて焼き上げたふわふわのシフォンケーキが明日の夜空を飾ります。この冬初めての静電気を袖に通したら髪の毛までしゃきっとしてまた見たくもない鏡に入り直して目の前のひとの真似をしないといけなくてうんざりです。話したいことを忘れてもそれでいいのかなんて聞かないでそのまま小皿に載せてただ夜が更けていくのを待つだけで、向こうに見える車のヘッドライトが意外と速く向かってくることに今まで一度も気づかなかったならたぶん幸せだったのでしょう、今までは。
