月がきれいですねと誰かがいうより前からずっと月はきれいだし、あなたのことがすきですという前からずっとあなたのことがすきです。あなたが振り向いたときに時計の針がぴったり合って、そこから向こうに抜ける道を歩いていたら空気がぱりんと割れました。わたしは不完全で証明されない愛のままあなたに寄りそったときに0か1のどっちかを落としてしまったから、斜めに積み重なったこころを香色の本棚にしまって旅に出ます。探してください。
狂い咲く花は狂いたくて咲いたのではないし、あなたを刺したのも殺したくて刺したわけではありません。夜に冷蔵庫が氷を作る音があたたかくてしかたなくて、ほんとはさかさまの本を読んで約束をしたふりをしかたなくしたから、いつの間にか手にしていたパラソルが咲いたことに嫉妬してしまったわたしが悪いのです。倒れてぐちゃぐちゃになった本棚を片づけられないまま逃げてしまってごめんなさい。もうひとりのわたしがきっと会いにいきます。待っていてください。
いつまでたっても始まらない映画館でみんながずっと座って、いつまでたってもおとなになれないわたしを見つめています。ポップコーンはとっくになくなってるのにいいひとと悪いひとしか紹介されないで、スクリーンに映るわたしがぱりんと割れて、そこからふつうのひとは向こうに出ていきます。望遠鏡から見る映画はとてもたのしいってだれかが言ってたけど、わたしは指輪をほうり投げて、絨毯に世界の中心が落っこちていくのをぼんやりとながめることしかできません。見つけてください。
見つけてください。