もうやめてもいいのにもうすこしだけを続けてきていろいろなものがほどけていって、視界のはしっこによぎった枝のようなしるしの色がだんだん小さくなってわたしは鏡に映らなくなります。こどものころにからだの中に入った黒い点はおとなになったわたしにドアを開けたら水がいっぱい押し寄せてくるってささやいてきて、夜になっても引かない暑さにとけてしまうにはどうしたらいいのかふわふわと考える夏を吸って大きくなった街路樹に寄りかかりながら星空を見上げてもその勇気がないのです。
暑い中にちょっと足を伸ばしたのにどこのお店もお休みばかりで結局いつものスーパーの袋を持って帰り道、後ろに狐が座っているのに踏切の音が聞こえないとさみしくて、言い換えられることばを探してもたくさんのファインダーの中にまぎれ込む紙切れが点を線に変えてくれるとは限りません。風に吹かれた緑が下向きの矢印を空高く白い雲の向こうへ、神さまが最初に決められた正しい位置にあるものがきれいに見えるならだいたいのものは間違ったところが好きなのです。
湯気が立つ食事に興味がないひともいるけれど、そうやって夜の窓の外から抱え込みたくないものを聞かないように手がしびれていてもそっと流しておきましょう。落ちていくひとの目をまっすぐ見られるならきっとだいじょうぶ、時間をかければいいものができるわけではないけどいいものができたふりをすることはできます。かたっぽだけのパンのやわらかさに油断して身をまかせないように、最後のドリュールをうまく塗れなくて抜ける色に手をつないで話しかけたら答えてくれるでしょうか。