痺れ

髪がまとまらないときに気安く話しかけてくる人を何とかして取り締まることはできないのでしょうか。ボサってたり膨らんでるのって見ればわかるじゃないですか。そういうときはほっといてってわかるじゃないですか。それを知って何でそんな話しかけてくるんですか。聞こえないふりをしてるのに何でどっか行ってくれないんですか。それとも何ですか、髪がまとまってないのがわからないんですか。自分は陽キャだから大丈夫とか思ってるんですか。勘違いしてひどい目に逢ったことがないんですか。

活字がひどくくっきりと見えるときがあります。いいボールペンを手に取ってみたいときがあります。病院が苦手すぎてこんなになるまで何してたんですかと医者に言われるときがあります。そういう時でも消失点は見えるもので、めがねがどうしても傾いてかかるようなときに、あなたを見ない方が互いにいいことだと確信して、あなたはわたしを二度と顧みることがなくなるのです。そういうときに後ろ髪を気安く引かれるような人にならないように。笑われてしまうかもしれないけれど、花束を胸に、あなたに微笑むことができますように。

あなた、わたしはあなたのやさしい気持ちを受け取ることができなくて、いつも無碍にしてばかりで、髪がまとまらないことなんてそんなことはどうでもいいはずなのに、手をつなぐこともできず、靴擦れを気にして歩みを止めて、謝る声がかすれるのも演技だと思われているんでしょうか。知っているんですほんとうは。そんなことを言うつもりなんてなかった。信じてください。こんなにキーボードを叩いてわたしの気持ちを書くことなんてないことを。指が痛くならないキーボードってないですか。ねえ、ほんとうにごめんなさい。