大理石の坂道から左右に入るだれも渡らない橋には欄干がなくて、その結び目のまんなかをいくつも重ねられたチュールレースの白い薔薇と白い薔薇じゃない花のアーチが覆っていました。たぶんシのフラットが不安定に透けていって見上げたら腰のあたりにこぼれる木漏れ日の中のベンチにまるまって、銀のベルがふたつ揺れて線対象に重なると下り階段に広がるトレーンがすこしずつ薄くなっていきます。閉ざされたまんなかの噴水に明かりがともるまでうつむいて、この祈りは渦巻くように植えられて、きっとどこかに届きますように。

異国のことばから作られた爪が星をつかまえて、まるくなったその輝きに永遠を寄せて誓うささやきは今も雲を映して石畳の道に転がっていきます。50と8回だけ曲がったその先はわざと行き止まりになっているから今までのような日々が送れなくなるけど、もうひとつのことばがくるっと回って色あせないやさしさを繰り返していくからだいじょうぶって信じることにしました。ちょっとだけあわてたような息を淡くなぞって流れた祈りは大輪に咲いて、そのぬくもりは静かなまま、まだ溶けることはありません。

古びたガーデンフェンスにからまった窓から白い薔薇が香って、それ以外の色に染まりたくないってそっと水を飲んでテラスから花壇を見つめるのはそのずっと向こうを思ってしまうからだめって言ったはずです。なんだかぼんやりと、満開に輝く薔薇の一番外側の花びらがもうしおれかけていることに気づかないでほしかったのかもしれません。テーブルに花を置くならひとにはなにを置くべきなんでしょうって聞いてもだれも答えないから、小さくアレンジした祈りは神さまのお召しものになって、そのお袖に触れたらひとひらずつ散っていきます。