糸の先

持ってないことを自慢するひとはとてもこわがっているのがわかるからそっと抱きしめてあげたいという気持ちはうそではないはず。あなたは(わたしはできない)いのちを賭ければ光ることができるけど、ゆっくりとスーツケースを引いて歩く方がずっとだいじなことに思えるから、たぶんこれからやさしい顔で近づいてくるひとはぜったいに敵だって思うしかないかもしれません。好きになるより好きになってもらう方が幸せということに気づいてしまったら、もうだめかもしれないけど。

昔は木造でも築100年のひとがいて、きちんとメンテすればいろんなトラブルをやわらかくいなせたのでしょうか。いまはこどものころから鉄筋コンクリートになるよう育てられるから昔よりもいろんな出来事に耐えられるかもしれないけど、ぽっきり折れると建て直すのがたいへんそうです。古い建物がたくさん残っているのはそれがよいと思われたからだけど、わたしはこれからどうなるんでしょうか。あなたに見捨てられて折れる前にチャンネル登録といいねボタンをよろしくお願いします(どっちもないけど)。アカウント停止で取り壊されないように気をつけます。

雨が降っていると雨の音がするは同じ意味ではないけど、あなたがいるとあなたの音がするは同じ意味だと思うから、わたしはじっと息をつめてわたしを見ているあなたの心臓の音をさがしています。サビ前に一拍おいた鼓動がめちゃくちゃな音階でかけ上っていっていきなり休符マークになったからあなたはそのとき死んだのだと思いますが、そのあと糸車がすごい勢いで回ってつむがれたいのちの糸を織り上げたのはわたしです。もし一本でも経糸をかけ違っていたらあなたはあなたではなくなっています。その、ごめんなさい。