一筆書きで描いた薔薇が奥へ沈む指先の標識であふれる通りに咲いたとき、凍った水と氷が透明なローテーブルと曇りの日に見る映画を決めてくれます。好きな100%フルーツジュースの果実の断面はチョコレートアソートに添えられたリーフレットとすこし濃いめに入れたコーヒーに見つめられて汗がにじんで、新鮮な夏野菜がだれだったかを思い出すように、目覚ましをかけないで眠ってしまうように、ずれた本の帯と重なった花は枯れるのではなく干からびていくだけです。
取っ手が取れるお鍋を売ってるお店と線香花火から上って枯れたひまわりが満月の下で煙たく輝いています。そのままのものを描くとかならずだれかがなにかを言うのですから寄せる左手で招く円を月の影の先に、0から1になるミルの右手を回して届いた香りを大切に包んで、半袖ばかりのフィルターにこっそり折り目をつけたら階段の先でいったん寄りかかって完成です。今日は使わないかもしれないソーサーがシンクの片隅でさみしそうにやわらかい布団をかぶって待っています。
これから夏が過ぎて雲が錆びたらつむじ風が嘘といっしょに回って、窓の外の帰らない道ばたにそっと種をまぎれ込ませることができれば家にいるときだけ髪をまとめても咎められません。あてもない旅をしたいカップは親友と別れて割れもの注意のラベルを貼り忘れた段ボールの中に、この季節には暑すぎる緩衝材といっしょに海岸のひかりが点くとにじんだ水滴とほこりの積もった声が明けの星を数えて、それは受け取るものがなくても抱きしめるものがきっとあることを知っています。