ドレープの間のこころは隠したまま、多くのものを失ってしまった後でした。過ぎる月日に甘えて好きな服ばかり着て、だれからも返事がないことを身軽に感じていたのが正しかったかどうかわからないまま、もうすぐ雨になって地面にしみ込んでいきます。雨がすきっていっておけばお手軽な繊細さが水たまりにはねてスニーカーの話ができるし、桜の前に梅を見つけたって写真を撮っておけば帽子をひとつ買ったくらいのいいねをもらえますよ。すりおろしたネックレスは視線をそらした春の星座を飾る星屑になって、取りこぼしたものを取り戻す季節がやってきます。
紙と、紙でできた紙以外のものが景色を構成している遊園地のようなドラッグストアに遊んで、まぶたはなんだか重くて好きな色にしてほしいって自分ではぜったいにやらないですよね。だれかをこころに思うとき、そのだれかはいつもあなたを見つめていますか。そうでないなら、はさみでそのひとのことをバラバラに切っても売ってる折り紙で簡単に作れてしまうくらいの軽い恋です。自分を切ると血が出ますので注意してください。赤い折り紙はそんなに仕入れてなくて、あまいキャンディの包み紙で代わりに作っておいてください、自分なんて。
夜は工事中でそのまま空を歩いていってビルの上まで、自分だけがスマホを持っていてもつまらなくてわざと手を滑らせて落としてみました。路上に立ってるだれかを助けようっていう親切なひとが多すぎて、たいせつに思うことの見返りはこんなひびの入ったからだでいいそうです。立ち止まったことがないひとが知らないうちに壊れていくひとのことを思いどおりにならないと嘆いても、この世のなにもかもが重力に逆らえないのだからひとのこころもそうなんだってわかってほしいのです。ひとはうつむくように、しずんでいくようにできています。