観測者

もうすこしで片づけられそうな時だったけどこころまで照らしてしまう夜明けを見たくないから夜は眠りにつきます。いつもそばにいるというひとはだいたいどこにもいないからどこかの山をながめに行ってもすごい以外の感想がなくてたまにおいしかったごはんのことを思い出しながらいつもの日々に戻るのです。だれかの玄関の表札がじっとだまって通りすぎるわたしを観察しているのがわかるからわたしは自分がわたしでないようにふるまうことにしています。

いつもはがまんしていたふわふわの帰りみちがずっとさそっているのはわかっていて、もうむかしむかしのお話はおわってしまったって知ってても子どものままおとなになってしまったから罪にならないと信じてはだめですか。あんなに雲がはやく流れるのを知っていたならきっとわたしだってと思うたびにやっぱりうしろを振り向いて日ごとの境界線もあいまいになって、きこえてくる陰口は肩にふり積もって春になってもとけないからゆっくりとつめたくなっていく体温をまいにちノートにつけるのです。

もうすぐひとつの足音がふたつに交差して動かない水面が青白くうつっていきます。たかいたかい海のうえをすべる色にはぜったいになりたくないのにどうしてわたしをいろんなところにつれていこうとするのでしょう。くすんだベッドの上からはためく旗の角度をはかってもどれくらいの意味があるのだろうって思っているならどうしてわたしにもしかしたらのお話ばかりで期待を持たせようとするのでしょう。かばんの中のかばんにはそんなにたくさんのものは入らないのですから。