カーテンから透ける朝の光に今日はすごい晴れかもって思って開けてみたらそんなに晴れてなくてむしろ曇ってたから、すこしくらい溶けるのが遅くたって氷は氷だって思い直してあふれていくわたしを無視することにしました。そのひとは最後の5月だったから、大葉をたくさん刻んで梅肉と和えてかつおぶしとか白だしとかで整えたペーストをおまけで出してあげます。もしお菓子を作るならブラックペッパーをたっぷりと、急ブレーキをかけて散らばった光を集めていつまでたっても点滅ばかりで変わらない信号を書き換えて渡ってしまいましょう。路地の向こう側に登って消えていく鐘に胸が高鳴っているうちはまだだいじょうぶなのですから。
ずっと同じ道を通るのは同じ景色を見たいからなのに今まで同じ景色を見られたことがありません。いつも同じなにかが違うからほんとうはいつもとは違う道なのかもしれないけど、本棚に飾られたたくさんの人形たちがひとことずつ話しかけてきて気が散って自転車置き場にほっておかれたわたしが違うひとだったかもしれなくて、いつもと同じ道に入り込んで迷っている最初のひとを助けないといつもとは違う道がいつもと同じ道のような顔をして1本余計ににょきって生えるみたいです。そうやって迷ったときに見るのが広げた地図からスマホの画面になってのぞき込むふたりの距離がすこし近くなったのはリアルなバーチャルのおかげなのですし。
いつまでたっても謝らないからせっかくかき集めた言葉が石になって雨の一日がすっかりグレーに固まってしまったことにすこし後悔してます。なにかやることがあったはずなのに昨日買ったチーズのかけらのことばかり考えてて、外ばかりでさみしくてたまには甘えたいってつぶやくベランダの手すりに気づかないふりをしてたら泣きながら飛び降りてしまったのはすごく後悔してます。だから洗濯物は部屋干しと思ったのですが今日の空があまりに抜けるようだからわたしも抜けるように飛び出してそのままに、ひとつ風が吹いたらすべって落ちてしまいそうなバランスでランドリーバッグにクリーニングに出すものを詰めてお散歩に行ってきます。