2025-01

つぶやき

種火

いつだっておかしいのはわたしだって純粋な宝石のようなアドバイスをくれるひとは、その宝石の角や冷たさで傷つくひとがいるのを知らないし、それがやがて汚れてそうして色あせた宝石をかかえただけのあわれなひとになっていくのを見たいと思っているひとがい...
小品

上を見て

特定のだれかにではなくみんなに向けていつもありがとうっていうひとはなにか心にやましいことがあるからだって、いつもなにかを否定してばかりいるわたしがそんなことをいう権利はないけれど、同じ未来を見たいっていわれても声の彩りがぜんぜん違うから、そ...
つぶやき

左側

キッチンの壁に貼った両面テープがうまくはがれなくて、今日はこういう日かもと思いながらスーパーに行ったらレジの人と話したときに声がかすれて恥ずかしくて、そんなときに冷凍うどんとねぎをかごに入れていたら頭のいいひとはどう対応するんだろうって、こ...
つぶやき

朧月夜

子どものころ朧月夜を初めて見たとき無性になにかを話したくなって、おかあさんに(なにを話したか全然憶えてないけれど)すごくたくさんそのときの月の様子を伝えようとしたのが、たぶんわたしの最初の自己顕示欲の顕れだと思います。明るくもなく暗くもない...
つぶやき

お酒

部屋にひとつだけぽつんと置かれた木の椅子の写真が好きです。冬の水は氷のように冷たかったけど、アップデートされたアプリにいつの間にかわけのわからない機能が追加されたことに戸惑ってしまいました。なにもお願いしてないのに花に水をやったから感謝しろ...
つぶやき

シヴィライゼーション

月や星に手を伸ばすというフレーズはよく聞きますが、実際に道端で月や星に手を伸ばしているひとを見たことがありません。同じように、自分はひとりだと嘆いているひとは、だいたいひとりではありません。自分を花のつぼみにたとえるほど思い上がってはいませ...
小品

逢瀬

風船は青空に飛んでいって、ふくらませたわたしの息がそこかしこに隠れています。どんな手袋をしても指先だけ寒い国はここです。そこでは飴玉が一日にひとつだけもらえます。教会の背丈は少し低くて、水をそのまま飲むことは禁じられていました。通貨はアセロ...
つぶやき

インフルエンザ

今までいくつ十字路で右に曲がってきたか憶えていません。たまには左に曲がれるときがあるのかもしれませんが、わたしはいつも右を選んできたと思います。左に曲がった方がいいときがあるのもわかりますが、わたしはいつも右を選んでしまいます。それは損だっ...
つぶやき

おうちの日

まいにちまいにちそこにきれいな花を咲かせるようなベッドメイキングをしようと心がけているのですが、どんな香りを込めるかのイメージがいまだにうまくつかめません。今すぐにいちごを食べないと張り詰めたくちびるがはじけてしまいそうな日と琥珀糖を作るた...
つぶやき

あなたとわたし

白紙よりも文字が書かれた紙の余白の方が静かな気がします。地下鉄の階段を早足で降りるときに吹き上げてきた風が紙を飛ばして、その時に散らばった文字がこれから降る雪の結晶のまんなかになります。文字は文字だけでは音にならないから、雪は静かに降るでし...