キッチンの壁に貼った両面テープがうまくはがれなくて、今日はこういう日かもと思いながらスーパーに行ったらレジの人と話したときに声がかすれて恥ずかしくて、そんなときに冷凍うどんとねぎをかごに入れていたら頭のいいひとはどう対応するんだろうって、これから帰ってAIに聞いてみます。トパーズの色があんなに変わるなんて知らなくて、ロックグラスがあんなに重たいなんて知らなくて、ちょっとお高めの耳かきがあんなに簡単に折れるなんて知らなくて、いろんな恥をかいてきました。この文章を読んでいるあなた、あなたは今までどんな恥をかいてきましたか。
関係者がこう言ってるっていうと信じてしまいがちなあなたをだますのはとても簡単だけど、上に落ちる滝が無害だってことはすぐに否定して、わたしのことを目薬をうまくさせないひとだとモニタの向こうで思っているんでしょう(それでなにが悪いんですか)。だってずっと悪いことばかりしてきたあなたは、ニュースのコメントの「深い洞察」とか「多角的な視点」とかのAI要約でわかったようなふりをして、フローリングに落ちてるごみを踏んじゃうと足の裏に食い込んで痛いのがわかっているのになんにも関係ないって顔をすると思うから、ぜんぶあきらめてほんとうに許せなくなりそうなのです。
夢見がちなひとをだますのは別にだめっていいません。でも夢を見ている人をだますのは絶対にやめてほしいのです。スマホの通知に目を奪われるのはそのひとの勝手だけど、それはもしかしたら宝石の輝きに目がくらんでるようなものかもしれないのだから、句点と読点の区別に着目して論評することがどれだけ筋違いなのかをわかってほしいのです。動画を見ているのか雑談を聞き流しているのかとっくに区別のつかなくなったあなたへ、花束と指輪を返すから、もうわたし以外のだれも縛らないでください。