いつまでも

ネックラインが広めのスウェットに着替えて照明をあたたかい色に切り替えても今日はぬくもりにつまずいてしまってわたしの中の鏡がほどけていきません。横たわるわたしはまるで行き止まりの坂のように脈が細くなっていって、ほのかに織られた光にどうしたら溶けていくことができるのかじっと考えているだけで目を閉じているのが息を止めているように苦しくて、どんなにやさしい音でもわたしのことなんてわからないからきっと目を開けたら空と雲の境目がはっきりしない朝を迎えてしまいます。

ぼんやりと体を起こして、床のラグがすこしずれてて、やっぱりすぐに横になって、次になにをしたらいいのか思いつかなくて、ちょっと肌寒いことに気づいて、もう一度布団をかぶって、ここで寝られてもたぶん一日中だるいから今日はなんかだめかもって思って、肝心なものには触れないまま、そうやってなにか思うことは息づかいのようにとぎれとぎれに、もう一度目を閉じて浮かんで消えて、たくさんのビーズの中に沈んでいくような感覚だったと思いました。こんなところで目覚ましは鳴らないからあともうすこしだけ。

夢の中のくもりの朝は空が全部動いていくように見えて、あの灰色のところに爪を立てたらどうなるんだろうって、たまに空気が水玉のようにまるくなってガラス細工が風に擦れ合うような音をたてて割れるのが救いです。だれもわたしを叱るひとがいないからわたしはどんどんわるいひとになっていって、足りないものをそのままにまどろんで、たぶん今日は息をしているのかさせられているのかもわからないままに、きっともうすぐ最後の言葉がにじんで詰まって、この世界は壊れて目を開けてしまうのです。