地上から空がないところに吹き抜けを作って下に水をためておけば落ちても底に沈むだけだったはずなのに、風を埋めた食器棚がご機嫌ななめでお皿を出させてくれなくて冷たいブルーベリーがグラスの中で待ちくたびれています。レモン味の炭酸水がいくら謝ってもつなぎとめる声は遠く泡の中にくぐもって、どうしても上の方に向いてしまう視線をむりやりシンクに戻して、やっぱりきのこの石づきはきれいに取りたい派だからそろそろ下手な運転はやめようって心に決めて、ぼんやりと包丁の無事を祈りながら潮が満ちた後に食卓につきます。
吐息混じりで話すひとはのどを痛めやすいからいつも自分らしくない言葉遣いでベッドにごろんとしたいのをがまんしてシーツを替えてぱりっと伸ばしましょう。猫を飼っているわけではないのですが猫が後ろを走った気がしても振り返らずに、冷房は1時間で切れるように、せっかく晴れた日にベランダになにも干してないのが気になるならまんなかを逃げていく枕をつかまえてルームソックスといっしょに並べておきます。冷房が切れた瞬間にいろんな音が聞こえてくるのがたのしくなったらそろそろ夏を迎える準備ができています。
星の向こうにたいまつを照らして踏み出せばなにかのかけらくらいは拾えたかもしれないのに暗すぎてこわいからずっと掃除機だけですませてきたのを後悔しています。ベッドの下は忘れなかったのにどうしてもそこだけ勇気が出なくて、黄色い帽子をかぶって体ごと2、3回落として心の空気を抜いたらきっとふんわり焼かれて食べられてしまうって先送りにしていたらもうどれだけ磨いても許されなくなりました。もうすぐかき氷の季節だって唇にひんやりと薄いガラスの器を1年後に、おいしいってほめてもらってまた会いましょう。