回路

時計から時がこぼれて1秒でない1秒を刻むときには窓に映るだれかが青色をほしがるからできるだけ叶えてあげましょう。うっかり自分の靴ひもを踏んでほどいてしまったのは何回目でしょうか、玄関で長すぎかもって気づいたときにちゃんとしとけばよかったのですけど、ここがきっと押していくときとわかっててもだれかを支えるなんてそんな大それたことは申し訳なくてできないのです。そうして抱えた思いは同じかもしれないけど、きっとだれにも支えられることなく生きていくしかないのですから。

裏声と地声を行ったり来たりする毎日は意味が重なりすぎてぐったり疲れてしまいました。人生は筋書きどおりに進んだ方がおもしろいって思ってたのですがありがとうって言うたびになにかがすこしずつずれていって、裏道に入ると口数が減るように、おとなになるにつれて用意できたのって聞かれることが減っていくように、いつの間にか斜めになったスマホがどきどきしているのがわかってきたのです。夜の散歩の途中でいつも舌を出してコンクリートに寝そべっていた大きな犬が今日はいなかったのが心配ですけど。

西にかかる虹に森を歩くだけで絵になるひととは違うから、白を踏むときに氷がなんとなく鳴ったのにそこまでセットが崩れないよう気にする必要はあるのかって甘さひかえめのチョコレートをお口に放り込んであげますから感謝してください。ひとりでいると西瓜を切る機会がぜんぜんないなってこの夏に備えて緑と黄と赤の境目の区別がわかるように目薬をさして、運が悪いことを嘆いても意味がないからってそんな切り替えがうまくいくと思ってるひとの人生はほんとうに楽だったんだろうなあって思うのです。

ありがとう。