夢の外

夢のどこかに行こうとするひとには触らないで、色違いに散りばめた明日を自分のものにしたいなら間違えた道でもそのまま歩いてしまえばいままで好きだって思ってたものがほんとうはそうでなかったことがわかるかもしれません。遠くの雲があんなに流れる日はひとつ息をついて、白い星が回る指先に目がさめて汗が引いたら枕元の本を片づけて、すこし頼りない足元でも背すじを伸ばして前を向いて、おとなになった今でもなんだってできるんだってだましたっていいのです。いつだって虹はかならずお日さまの反対側に見えるのですから。

波の音がこわくてスマホを切ったのに音がなくなったときの音がして、リボンの残りが滑り落ちないのはひとりだからだって信じていたのに夜の空に浮かぶ手のひらにはとげに刺されたあたらしい跡がありました。もう痛くないけどきっと消えないならそれはそのひとを形づくるなにかになってしまうけど上書きはあやまちだと思うひとたちが多すぎて、迷いはじめるともういなくなった木陰の夢に砂が落ちるまで、向こうの方のそら色のかけらに寄りかかって休めばだれかの通り道になれるかもしれないって知ってしまったからしかたないのです。

時間になったらいろんなことができるかもって思っていたのにしばられるものが多すぎてなにもできないままただベッドの中で時を刻むだけでした。手がすらっと白くきれいになったような夢なんてぜったいに見ない方がいいんです。パン屋さんでケーキが載ったトレイを返すときにうつむかないように、昼下がりの軽いかばんに寄りそう日差しはもうすぐ巻き戻るときになにかを決めなくちゃいけなくて、とりあえずベランダのブランケットを取り込んだら火照るベッドにそっと座って、ちょっと焼けてしまった腕をこすってみるのです。