曲がり角

なにかに焦って早歩きの今日は半分のガラスの向こうからのぞくカレンダーの数字が白黒に目立ちすぎて、上から降りてくる信号が青なのに立ちすくんだままきっと向こうにかすかに浮かんでいる夏の終わりもスマホの通知に隠れて目に入りません。追いつけなくてシャツの裾が手すりのない螺旋階段の裏に回ってわたしを忘れて、追いかけられて靴の紐が胸の奥の砂の音に引っかかって息をのんで、タップがうまくできなくて急ぎすぎた壁にもしも救われるならそんな熱は今すぐ止めてしまってもいいのです。

順番待ちの間にお塩を2つまみ、リズムに乗って胡椒を3振りしたらちょうどいい感じのわたしになって飛び込む準備ができました。あんまり上から落とさないで、ゆっくりとすべるように入ったら日焼けの覚悟を決めて天国まで、知らないふりをしても芽は出てしまったから素直に迷ってみましょう。切れてかすれた息がすごくたいせつだって気づいたときには曲がりくねった茎が空を飛ぶ理由を探しています。しあわせかどうかわからないときはだいたいしあわせだってことがわかるのはもう少し先です。

寄りそうひとりごとに着替えてそっとつぶやいた夏のにおいは毎日のくらしにすり切れて、ここまで来たのにどこかに行ってしまった偶然を急に戻されたからそのまま家に帰ってしまいました。記録はそうだけど記憶には残らない手のひらの文字はひらひらと屋根を超えてBからAにこころを支えて、遠のいていくほんとうをあきらめないで追いかけようとがんばって走って息を切らして、それでもほどけて形を変えていくたとえをどうにかして抱きしめてそばにいたかったのです。もう叶うことはありません。