いてはいけないひとがねじれたまま、放射状に咲いたオレンジのメロディが空っぽの部屋をいずれ満たしていきます。6回たたいてなにもないならなにかを探しに自然体に、いつまでに戻るか伝えられないことは一面の灰色の向こう側の青に謝っておきます。徒歩でも自転車でも車でもできるだけわかりにくいところへ、だんだん暮れていく電車のカーブにつり革がかたむいていくのを閉じた指先でなぞらないように、未読の昨日と既読の明日の間の居心地がよかったことがあったでしょうか。
おなじ歌をいつも歌うひとがなぜだか涙を流しています。座り込んだままおなかはすいてくるけど髪の毛があまりにふわふわすぎて寒いのか暑いのか、がんばってるのにうまくメレンゲが立たない日はいろんなことをあきらめて、全体的に赤い時間が体に足りないみたいです。保存し忘れた記憶は枝の先に揺れて、星が弾むまたたきはだれかのものさしになって、積み重ねたからたがいに知らないけど幸せを祈ろうだなんて、スマホがつぶしてくれた暇の死体がアスファルトにたくさん散らばっています。
たくさんのプレゼントをもらうひとがうれしそうに隙間を埋めて、わからないことを占うなんてしないからこの部屋にかゆいところはありませんかと尋ねてみました。上がる小鳥になにも見えなくなる朝の川は組み合わされた気持ちの骨組みを通りすぎて外に、明日までの時間はわかるのに距離と速さをだれも知らないまま日々が配られていきます。冷蔵庫から出したてのかごの中の電球があたたまってきたらくぐらせたこころも切りとって、そのときを追い抜いていくために近づいてきてほしいのです。