方眼紙のような食卓の上のひかりをナイフとフォークでこまかく切りわけて、グラスの中のわたしと月はじっとうつむいて、からっぽの飾りもののワインボトルがなめらかに星をまわるりんごを描いていきます。花のように束ねた電球とひとつだけお皿からこぼれ落ちた音符はクロッシュにかくれて、1から12の文字盤を歩くふたりは同じ数だけ出会いを重ねることができないことを教えてあげようか迷っているみたいでした。黒髪は白い線だけで構成されていますか。
みんな手袋をするのがあたりまえの場所で常温に戻したわたしの声がジャムの蓋のふちにほっと腰かけてかりかりに焼いた追憶を彩ることができるなら、しっとりと泣いているふりをするクロテッドクリームとけむたいナッツも散らしてあなたの前にすました顔で出されてみてもいいかもしれません。どこで過ごしても急にすっぴんで包み紙から出したらきっとそこにいることだけでは証明にならないと言い張るでしょうから思いだっていっしょに重なっていることをどうぞ証言してあげてください。
塩をすこしだけ振ったコンソメスープがスパイスと燭台の灯を映してゆらいでいます。テーブルのまんなかに集まった罪は水平なわたしが気持ちをつたえる方法をひとつも持ち合わせていないのを知っているのです。お皿をかたむけてスプーンを手前から奥にすくうときの表情は歌いはじめる瞬間といっしょだから籠のフルーツがいそがしそうな白いエプロンをつけたひとを招いても責めないで、喉をくすぐる泡のような昨日はいずれ消えてしまいますけどその写真はダイニングの片隅から今日も食卓につくひとたちを見守っています。
