はつりね

つぶやき

かなたへ

わたしは空を見あげているけど、空はなにを見あげているんだろう。それはきっとさえぎるものがない宇宙に広がる満天の星と、その星にわたしたちが託したどうでもいいごみのような願いや思い。スペースデブリっていうんだって。たまにぶつかるたびに空き缶が鳴...
つぶやき

恋の話

寒いね。今日は雨だから、恋についてお話ししましょう。ひとは好きでもないひとと恋に落ちることができるから、わたしの家の窓から見えるあの通りを歩くひとはかならず恋に落ちます。今日もすれ違ったふたりが目を合わせた瞬間に恋に落ちて手をつないで寄りそ...
つぶやき

種火

いつだっておかしいのはわたしだって純粋な宝石のようなアドバイスをくれるひとは、その宝石の角や冷たさで傷つくひとがいるのを知らないし、それがやがて汚れてそうして色あせた宝石をかかえただけのあわれなひとになっていくのを見たいと思っているひとがい...
小品

上を見て

特定のだれかにではなくみんなに向けていつもありがとうっていうひとはなにか心にやましいことがあるからだって、いつもなにかを否定してばかりいるわたしがそんなことをいう権利はないけれど、同じ未来を見たいっていわれても声の彩りがぜんぜん違うから、そ...
つぶやき

左側

キッチンの壁に貼った両面テープがうまくはがれなくて、今日はこういう日かもと思いながらスーパーに行ったらレジの人と話したときに声がかすれて恥ずかしくて、そんなときに冷凍うどんとねぎをかごに入れていたら頭のいいひとはどう対応するんだろうって、こ...
つぶやき

朧月夜

子どものころ朧月夜を初めて見たとき無性になにかを話したくなって、おかあさんに(なにを話したか全然憶えてないけれど)すごくたくさんそのときの月の様子を伝えようとしたのが、たぶんわたしの最初の自己顕示欲の顕れだと思います。明るくもなく暗くもない...
つぶやき

お酒

部屋にひとつだけぽつんと置かれた木の椅子の写真が好きです。冬の水は氷のように冷たかったけど、アップデートされたアプリにいつの間にかわけのわからない機能が追加されたことに戸惑ってしまいました。なにもお願いしてないのに花に水をやったから感謝しろ...
つぶやき

シヴィライゼーション

月や星に手を伸ばすというフレーズはよく聞きますが、実際に道端で月や星に手を伸ばしているひとを見たことがありません。同じように、自分はひとりだと嘆いているひとは、だいたいひとりではありません。自分を花のつぼみにたとえるほど思い上がってはいませ...
小品

逢瀬

風船は青空に飛んでいって、ふくらませたわたしの息がそこかしこに隠れています。どんな手袋をしても指先だけ寒い国はここです。そこでは飴玉が一日にひとつだけもらえます。教会の背丈は少し低くて、水をそのまま飲むことは禁じられていました。通貨はアセロ...
つぶやき

インフルエンザ

今までいくつ十字路で右に曲がってきたか憶えていません。たまには左に曲がれるときがあるのかもしれませんが、わたしはいつも右を選んできたと思います。左に曲がった方がいいときがあるのもわかりますが、わたしはいつも右を選んでしまいます。それは損だっ...