小品

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初夏

白いサンダルに日が差してななめになった鈴が鳴ったらアームカバーを忘れずに、葉っぱのかたちをしたかばん...
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大理石の坂道から左右に入るだれも渡らない橋には欄干がなくて、その結び目のまんなかをいくつも重ねられた...
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星の輪

荒れた指先で空の文字をなぞったら上のほうから聞こえてくる星の羽音に似ていました。時の限りに歌うひとは...
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雨音

雨の日の庭を歩くときの自分の足音をどうしても聞きたくないのはことばにならない音をふたつ混ぜたくないか...
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余白

正面から左にターンしてひるがえった白いワンピースの裾が右に残るとそこに空白ができて休符になります。リ...
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衝動

ドレープの間のこころは隠したまま、多くのものを失ってしまった後でした。過ぎる月日に甘えて好きな服ばか...
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どこになにを

光の加減でうつくしくなったりみにくくなったりするひとやものが多すぎるから真実を探すのをあきらめて、み...
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おうちのなか

冬の庭に遊ぶまっかな子どもたちにはやさしくしなければいけないから、寝室のベッドと窓の間のすきまスペー...
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水の音

月がきれいですねと誰かがいうより前からずっと月はきれいだし、あなたのことがすきですという前からずっと...
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上を見て

特定のだれかにではなくみんなに向けていつもありがとうっていうひとはなにか心にやましいことがあるからだ...