対斜

くっつけたぴかぴかの遊びごころはあかく染まる夕立にかき消されましたが絵のようなひとはうれしそうにするときにほんとうにうれしい表情だけになるからちょっとうらやましいのです。ペダルを踏みながらグリッサンドでかけ上がっていくざわめきは胸から飛び出てしまわないように別れに乗せてひとり部屋にとじこもって森の外を知らないまま軽くなったり重くなったり、かわいていく指先は不思議そうに首をかしげてコップの水滴にまじる透明な不安をふき取って捨ててしまいました。お大事に。

夜に気づいてほしくなかったのは痛みを消せないわたしがそばにいても帰る意味がないからで、今日はだめな日かもとか思いたくなかったから平気なふりをして坂道がすきなねこを手まねきしてみます。かんたんに刻める爪のあとはいわなくてもいい空気感でちがう速さのことばをしばってためらいもなくゆりかごに寝かしつけたあとにどうせ明日はあるっていうのでしょう。山のどこかでわいた水はやがておおきな川になるのにぽつぽつと歩くひとりひとりはどこまでもいっしょにならないようでした。

漢字とおなじように気持ちにも音読みと訓読みがあるからずっとだまってたけど離れない姿がいつまでもわたしを映すとき毛先を気にするくせをやめなきゃいけないのにいつか乱れた星のあつまりをなおして答えない伴奏に点線がかってに震えるのです。冬が生まれたおはなしはちいさな木箱を開けてやわらかい長袖と半袖のさかいめを作ったからこうして針を運ぶしあわせを思っていくつかの吐息をこっそりあなたに織り込むことができたらこうして夢からさめることもなかったのに。