封筒の中の夜が青くてもたのしそうに話してくれる旅のことは気になっていつも切手を消した波打つしるしを取ってあるのは内緒です。自然につないだたてがみが晴れ間にゆるんでいく道のその先でぐるぐるうずまきのシチューに胡椒をひと振り、にわか雨の後のありがとうの景色はずっといっしょがいいのですけどひとつとふたつの濡れた足跡はたまに交わるくらいがちょうどいいとか気分と背中合わせで、がんばらなくても積み重ねられるささやかな未来のことはまだことばになっていません。
そうやって秘密を思いついたときの顔を楽しみにしているのはとっくにばればれですけど映らない窓ガラスの隣にしずめた唇はまだだれにも間違えられていないはずです。暗がりにゆれるろうそくの火の前で立ちつくすのはそこにいのちが燃えているからで、期待なんかしていないのに通りすぎていく傘が閉じたときにぎゅっとしぼりだされたわたしの血液はとたんに泣きそうになって、間に合ったはずのさしのべた手にのせた破片なんかなければよかったのにってとおくに行ってから思ったのでした。
ひとりお風呂の中で落としたものに向き合わないままきれいに汚れていってこぼれる水滴はすり切れた時間に置き換わっていきました。つたえる歩幅を合わせてくれなくてもいいからちがうことはちがうと教えてくれればひび割れたわたしのふちは一枚ずつ重なってきっと体温を持つのです。右に進む三角のボタンは押さないと決めてただしい瞳を読んでいけばまっすぐ生きていけるのでしょうけど胸のうちのいくつかの結び目をほどいてこぼれたちょうど葉書が埋まるくらいのことばをどうしたらいいのでしょう。
