アルミニウム

白と黒のエチュードは出口のないたくさんの花壇に咲く色とりどりの瞳を踏まないためにだれかの答えが届きそうな奥の方でかすかにさざめくたいせつな耳鳴りをうつわにまわして秋の風にみだれた服もそのままに胸の前で手を組んで祈りつづけています。ずっとこころの外にいる春の歌はさかさまになっても道ばたのブロックによけられたハンカチのはしっこにそっと置かれた小石のようにあたたかいひとりきりの日だまりに非対称のままかたむく花瓶の閉じられない数字にひとしきり指を折るのです。

月曜日の空に重なる傘はぽつぽつとしたたるねがいをはねてとおくまでひびかせてうすい文字を追うだけで垂れ下がるしおりが電車にゆられながらいつもとちがう景色に目をまるくするのをたしかめて満足そうに閉じられていきました。かわいい絵本に夢中になって切り忘れたつめは戻らない電話に改行ばかりして待たせても上りながら曲がる信号が赤くないときにこっそり点滅してきれいな水を飲んでいます。ねむれない夜は早く昼になりたくてみんなに寝てもらうために耳もとに貝がらをあてたのです。

せっかく合わせた周波数もつまずいて汚れたひざをはらっているうちに飛んでしまってうつりゆく窓際にことばではない傷を刻んだ川をわたる高架橋を24時間営業のコンビニが彩っています。ようやくねむりについた星と星の間の9鍵分の共鳴を集めた小瓶のふたをぎゅっとしめてほんのちかくに所在なくただ触れられるのを期待する本のようにおとなびたささやきをふるいにかけたらあたらしい涙がからだの熱とおなじ温度になってはじめてなのになつかしさを感じるはずです。