まんなかにちくっと痛いひとしずく、本を読むときはローズマリーを手元に置いてほんのすこしでもページをめくる風がしずかになるように、とおいとおい昔から時計には時を計ることよりもずっとたいせつな意味があるのだとそっとほほ笑んだひとは枠に沿って線を引くのが苦手そうでした。長い話の心臓をきゅっとしてしまえば癒されるのでしょうけど、役に立たないのではなく役に立ててほしいだけでしたから勇気を出して戦いつづけるひとに差し出せるものを探してまあるく祈っています。
とことこと家事をすると今日みたいな薄めの空に願いをかけているように癒されるのが不思議です。ぱりぱりにかわいた希望の袖を内側に入れてくるっと折りたたんだら記憶の引き出しにそっとしまって、弾かなくなった楽器と音の出なくなった楽器におなじようにほこりが積もっていくのにちょっと待ってって言えたらよかったのですが、まあるくなった月は明日から欠けていくことを教えてもらったのはよかったのかどうかわからないまま、ベランダの螺旋の花がどこかに行ってしまう前に伝えたかったのでした。
はしっこの優先席がなぜだか泣きそうにしていたら放っておけるひとはそんなにいないのではないでしょうか。ひとしきりなでてもこぼれる涙はやまなくて、わからなくても好きなことがこんなに多いとなにがわからないかわからなくなるからビールはにがいことと毎日0時をまわる瞬間をつないでいるうちに地球がまあるくなったことくらいはおぼえておこうと思いました。もしもひとつだけ願いがかなうなら、どうか輪になったわたしは昼下がりにたゆたう音と好きなコーヒーのとなりにいられますように。
