ちょっとやってみようって軽々しく炊飯器レシピでお肉を煮込むとお米が炊けないってこんな単純なことに気づかなかった罪深いわたしはあわててパックごはんを買いにぐるっと回って近くのスーパーに向かいます。ここでもしわたしが縛られて吊るされたらすこしくらいは花に見えるでしょうか。なにかの果物として入口の近くの棚に並べてくれるでしょうか。パーソナルカラーを意識してしまうからお肉のパックにするのはどうか許してほしいです。ただごはんが炊けなかっただけなのにつまらないことばかりこうして考えています。
なんど時間が戻っても同じことをしてしまうなら名前を変えればいいはずで、そのためのストックをたくさん準備してふたつみっつくらい持ち歩くことにしましょう。いつでも名前を変えてほかのひとになれるならなにがあってもなにをされてもだいじょうぶだって言い聞かせて、だれかやなにかをだましとおせるならそれが一番いいことだって、目を閉じて耳をふさいで口を覆ってわたしは活字になります。中にとけた音が二度ともれてこないようにガラスの瓶のふたをきつく締めたはずなのに蛇口からほかのなにかがこぼれ落ちてきます。
スーパーから戻る道ばたで土をじっと積んでは固めてたその子は明日きっとガードレールに登ろうとするでしょう。もうだいじょうぶってわらって子どもに言えるようになれたらいいのにいつまでもだいじょうぶじゃないままパックごはんとついでに買ってきた冷凍ブロッコリーをレンジでチンしてあとでお肉を仕上げるときに放り込みます。最後の1着って言われた服を買ってしまうのはほんとにだめだって静かな食卓に思い出してその服を責めるのは筋違いですけど、チャイムが鳴ったらびくってするからだれも来ないでほしかったのに。