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- 「日々の戯言」 -

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BlackAsh 不定期連載〜ファミリーマートで捕まえて Labyrinth of the Mind 2002/01/08 03:24
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〜 乱 想 〜





「好きだよ。あなたのことが好きだよ。大好きだよ・・・」


「離れるの、イヤなんだよ・・・」





言葉はすぐに空気に溶けてしまうけれど。
それは、消えることのない、彼女の言葉。
記憶に刻み付けられて、これから絶対に消えることのない、彼女の言葉。


真っ白なコート、それはまるで天使の衣をまとったようで。
夜の闇にいっそう鮮烈に、ありえないほどの輝きを放って。
クリスマス・イブのその日、彼女は、私の前から駆け去っていったのでした。


私を、にらみつけて、駆け去っていったのでした。




私は、部屋で、煙草に火を点けました。
それは、暮れも押し迫った、12月30日のこと。
ようやく仕事も片付いて、何とか家にいることができるようになった、30日のこと。




そのにらみつけた瞳に、刹那垣間見えた、彼女の涙。
それを思い出すたび、私の心に戻ってくる、彼女の動作。久しぶりに逢えた、彼女がホーム・パーティを抜け出してドレスのまんまで走ってきた、あの時の。


「・・・1年かぁ」
「最低でも、だって」
私のつぶやきに彼女は答え、カラカラとストローでコップの中の氷をかき混ぜました。
めがねの奥の瞳が妙に大人びて、それがひどく不自然でした。



不自然にまで大人びた、彼女の動作。
そして、クリスマスに私を誘った時の、彼女の微笑みも。


「あたし、もう、絶対に行かなくちゃならないから」
いよいよその微笑みは深くなって。


何でそう言いながらあなたは笑えるの?


「もう、あと1年くらいはこっちに戻って来れないとかになっちゃうから」


何でそう言いながら笑えるようになったの?


「あたしに・・・ 思い出、くれないかな・・・?」





彼女の、そんな振る舞いが。
最後の泣き顔・・・ それと、コントラストを形作って。
あまりにも違い過ぎる、彼女の動作、言葉、そしてその表情。


それは、きっと。
急に引越しが決まった時から、必死に彼女が身につけようとしてきたもの。


我慢して、我慢して。
少しずつ編みこんでいった鎖かたびらのように。
少しずつ塗り重ねていった糊のように。




あたしは、平気だよ。


しょうがないもん。




彼女が、そう言い聞かせてきていたこと。


それに、私は。
気付いているかのように、今までこうやって書いてきて。
何も、気付いていなかった。


気付いていたのかもしれないけれど、何も答えていなかった。




そして。
最後のその瞳は、確かに。
確かに、私に向かっていて。
ある言葉を、投げかけていました。




あなたは、あたしと離れたくないって思ってないの・・・?


あなたは、あたしがキライなの・・・?


あなたは、あたしのことをどう思っているの・・・?




目をそむけ続けてきたその問に、私は、煙草の煙を大きく吸い込んで、天井を見詰めて。


目をそむけていたのはなぜ?
もう10も年が離れているから?
彼女の引越しを止めることができないほど力がなかったから?
高校生となんて、世間体が悪いから?


いくらでも出てくる言い訳に、煙草の煙を吐き出しながら、苦笑いして。


それでも。
私に元気をくれた。
私に安らぎをくれた。
そして、私に笑顔をくれた。


彼女の輝く笑顔。


それは、もう帰ってこないことは、明らかで。




明らか・・・


明らか、か・・・




何だよ、えせ論文みたいな言葉遣いをして。


こんな時でも、何もしないんだな、お前は。


昔から、何でもあきらめが早かったしな。


できないことがあると、すぐに言い訳してさ。


方向修正だけは、うまかったよ。それは認めるよ。


できる範囲で、それなりの成果を収める、それは確かにうまかったよ。


いつでも冷静に、目標を自分の力で何とかなりそうなところに持っていって。


それを周囲にも納得させて。


ま、いいんじゃないの?


それが、お前の言う「大人」なんだろうしさ。




それで、いいんなら、さ。








私は、煙草の火を消しました。
時計を見て。昼の12時過ぎ。


コートを着て。
髪を適当に整えて。
財布を持って。


ああ、もう準備なんてどうでもいいや。




いつ、出発するのかなんて知らないけれど。
もう、出ちゃったのかもしれないけれど。


伝えたい言葉が、あるんだ。


もう遅いんだろうけれど。
今さら何を言っても無駄なんだろうけれど。


それでも。
伝えたい言葉が、あるんだ。




私は、外へ出ました。
彼女の家なんて知らない。
約束もしてない。
どこへ行ったらいいのかなんて知るわけない。


それでも、足は動きました。


彼女と最初に出会った場所。
セミロングの黒い髪を後ろで二つに束ねてファミマの制服を着た、あの女の子と、初めて出逢った場所。


近所のファミリーマートの看板は、その日も、きれいに光っていました。



To be continued...


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BlackAsh 女とは 2002/01/06 02:34
日々の戯言 電波ゆんゆんしながらちょっと某世界へと旅立ちます。
そう、数時間くらいです。それでは〜
『女は魔物である』というよく聞かれる言葉が果たして的確に真実を表しているのかどうか考察するに、そもそも『女』という言葉の辞書的な定義を知らなかった自分に少々慌てて、早速広辞苑(第四版)を引いて確かめてみたところ、「女:人間の性別の一つで、子を産み得る器官を備えている方」などと妙にリアルっぽい、けれども「子を産み得る器官」などと微妙に中途半端な記述で、もう少しこう、何と言うか、ロマンチックな定義はないのか? ロマンチック・・・ つまり「女:男が通常愛する対象。しばしば2次元世界において描かれ、『おにいちゃん♪』などと別に兄でもない男に対して呼びかけるケースが多い」とかいう定義だよ! と激しくロマンチックとは程遠いかもしれない? と読者に対して同意を求めざるを得ないような心細さに溢れる脳内定義を作り出したはいいものの、果たして本当にこれでいいものかどうか、これは当の女性たちに訊いてみるほかないであろう、と、とりあえず女性の友人たちに電話をかけ、「あ、もしもし。あけましておめでとうございます〜。あ、うんうん何とか元気でやってます。そんでさ、訊きたいことがあるんだけどさ。うん、あのね、女って、何?」とダイレクトに訊いた自分は正月早々何をやっているのか? いいのかこんなことでこの1年? よい年になるのか? などと一瞬悔やんだりもした寒い冬のある1日、などと悔恨の思いにふける間もなく、1人は「染色体が違うんじゃないの?」とミもフタもなく極めて冷静に答えられて返す言葉もなく、もう1人は「女・・・ んーとね、おっぱいでかい人〜! あれぇーおっぱいちっちゃい人もいるよね〜」と、素面なはずなのに酔っ払ってそうな答えをした上に自ら突っ込みをお入れになりあそばされて返す言葉もなく、もはや3人目にダイヤルする気力も失せ、ロマンチックな定義はおろか、何だよリアル過ぎだよ染色体とかおっぱいって! もっとこう無限かつ夢幻の愛に包まれるような定義はないのかよ! と逆切れしたりしてみるのだが、現実は結局電話のような答え、あまりに私の脳内定義と現実の女とがかけ離れてしまい、いいよ俺は脳内の女と一生を過ごすよ、ともはや人生20代にして終了のような決意をしつつ、そんな決意をさせた脳内の「女」とはやはり魔物なのではないか、と、「おにいちゃん♪」という呼び声をはるか遠くに聴きながら、『女は魔物である』という言葉に薄ら寒い恐怖を覚えたりするのです。


『女は魔物である』というよく聞かれる言葉において、なぜ『魔物』なのか、『魔物』とは一体何を表しているのか、という疑問を検討するに当たり、とりあえずは『魔物』をGoogleイメージ検索で引いたところ、こんな感じとなってしまい、もはやどこに突っ込みを入れたらいいのか分からないほど的を外れまくった画像の大群、とりあえずアンタは誰? え? 元内閣安全保障室長だって? そっか日本政治を動かす者は魔物だったか、とさりげなく社会を風刺するBlackAshをアピールし、そそくさと魔物とは何かという本題に戻るんですが、コレコレなんかは十分に男心を惑わせる魔物なんじゃないかと思うんですがどうでしょう? とまた独自のアナザー・ワールドに入りつつある私を誰か止めて! 「まだ間に合う! 引き返せ!」という看板を誰か立てて! むしろ今日秋葉原のSofmapに行った時に見た、午後3時からの特売時間、新年初買いとばかりにすさまじい光を放つ瞳をぎらつかせてエロゲーを20本ばかり抱え行列に並んでいたケミカルウォッシュのジーンズにビニールの黒いカバンを肩にかけていた彼みたいにならないように私を止めて! 秋葉原に新しくできていたanimateに入ったら入口の赤外線ブザーが鳴って、他の店で買ったカバンの中のブツをレジに預ける羽目になったことは忘れさせて! ていうかその製品が、リトルモニカ物語に惑わされて、しかも音楽にまで魅了されて秋葉原のCD屋さんをうろつきまわってようやっとゲットしたリトルモニカのサントラCDであったことも忘れさせて! ていうかブザー鳴らしたのオレかよ! と心中すごく動揺したんだけど、コートの裾をなびかせて素晴らしく自然に微笑みながら店員としゃべっていたことも忘れさせて! ああこんな私はThe End? Das Ende? しかもこの日記を書き終わったらリトルモニカ物語をやるために徹夜することになる時点で終了? などとこれから取る行動に思いを致し、ああ、げに魔物とは恐ろしいものよのぅ・・・ などと開き直ったようにつぶやいて、結局女は魔物なのかどうなのか、というよりは少なくとも「エロゲーは魔物である」という結論を出してしまった私はこれから一体どうなっていくのか、エロゲーは魔物である』という言葉に薄ら寒い恐怖を覚えたりしつつ、これからしばし脳内世界へ旅立ちます。それではみなさん、さようなら・・・


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BlackAsh 正月休暇 2002/01/03 04:25
日々の戯言 全てを忘れて寝こけてごろごろしたい・・・ と、心の底から思うのです
この正月、1日2日と、実は結構ゆっくり休めています。外に一歩も出ないで、かなりしっかりと休めています。
でも、いずれまた会社へ出勤しなければいけないんだ、と思うと、しゅん、となってしまうのです。また、あの戦場に戻らなければいけないんだ、と思うと、しゅん、としてしまうのです。
どのくらい、しゅん、としてしまうかというと、久しぶりの手作りのお弁当を会社に持っていって、お昼休みにわくわくしながら開けたら寄り弁になっていた時くらいに、しゅん、としてしまうのです。もうひとつ具体例を挙げてみるならば、会社で100枚連続一括コピーをやっていて、快調に続々とコピーされているのを確認し、ちょっとビルの下で煙草を吸って、大きく煙を吸い込んで「さあ、コピー終わったらがんばるぞっ」と気合を入れて戻ってきたら見事に原稿が紙詰まってぐちゃぐちゃになっていた時くらいに、しゅん、としてしまうのです。


ということで、仕事から完全に離れるため、最後のチェックだッ! もうこれ以降新年初出勤まで仕事関係のメールは見ない! という決意で、今、ちょうど会社のメールを見たわけですよ。
そしたら、来てるじゃないですか仕事がッ! しかも何ですか? 急ぎの仕事だって? って、いや本気で血の気が引きました。もう一瞬にして血が引きました。
どのくらい血の気が引いたかというと、麻雀漫画「アカギ」の鷲津麻雀ルールで親倍を直で鷲津に振り込んだ時くらいに血の気が引きました。いやそれは本当に血が抜かれてるよ! 一発で致死量越えてるよ! しかも「アカギ」を読んでない人には分からないよ! ということでもうひとつ具体例をあげるならば、田中真紀子に背中から、ふわっ、とまるで深夜の受験勉強中机の上に突っ伏して寝てしまったその上にそっとやわらかな毛布をかけるように抱きしめられ、「あたし・・・ あなたのことが・・・ 好き」と言われた時くらいに血の気が引きました。


そして、今この日記にこうやっていろいろと書いているんですが、せっかく会社から離れた貴重な充電期間中なのに、その内容が全部会社がらみの出来事であることに気づいた私は、結局会社から離れられてないよ、と思って、しゅん、とすると同時に、このままでは一生社畜だよ! と、新年早々行く末を思って血の気が引いてしまうのです。






というわけで、明日は元気に出勤です新年早々めでたいですあはははは(泣きながら)。


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BlackAsh 初夢・・・? 2002/01/02 05:52
日々の戯言 BlackAshはいつも夢の中♪
さて。新年です。
ここでやっぱり、あけましておめでとう、と言いたいんですが、管理人3人は、それぞれ徹夜で雀荘@微妙にプラス、チャット年越し@翌朝7時半まで、徹夜飲み@翌日でろでろと三者三様、しかもどうも幸せな一年を予感させるには程遠い大晦日から元旦にかけての時間だったのでした。
何やってんだよBlackAsh・・・ 今年も元気に不健康! ということで、どうぞよろしくお願い致しますっ。


さて、この時期になると、各サイトさんの日記が初夢の話題になるんですが。
どうも、私は夢を見ない性質なんです。それだけ充実して眠っているのか、単に憶えていないだけなのか分かりませんが、とにかく夢は見ない。
一番近い時期に見た夢で憶えているのが、もう今から5年以上前・・・ ってそりゃ前過ぎッ!
ま、でもそれ以降見てないんですからしょうがないんです。
で、その5年位前の夢なんですが・・・


リング上で、グローブをつけて関根勤野茂英雄がボクシングをしてます。しかも、すごい乱打戦。防御もへったくれもなく、ただボカボカとフックの打ち合い。それで、野茂がやや優勢。あのクールな表情で、ただひたすら関根勤を左右のフックで叩く叩く。
やがて、耐え切れなくなった関根勤が、コーナーでリングを見上げている私に向かって、「タッチ! タッチ!」と交代を求めてきました。いやボクシングにタッチはないぞ? とか思う間もなく、私はもうグローブをつけていて、「OK!」とか言って関根勉のタッチを受けてリングに上がり、野茂英雄と対峙して・・・!

というところで目が覚めたんです。
本気で「オレ、どうしちゃったんだろう・・・」と思ったよ。
というわけで誰か夢判断お願い。


夢は、心の奥の真の願望を表す、とも言いますが。
ということは、夢を見ない私は、そんなものがないということに、つまり心の奥に隠された本当の願望がない人間であるというのでしょうか。
そんな・・・ 私にだってたくさん隠れた願望があるというのにッ! あれだけ女子中学生のことを応援してるのにメールが1通もこないのはどうにかしろ女子中学生とかッ! はじるすが何で売り切れか早くオレの手元に来いとかッ!
あとは、あとは・・・
こんなのとかッ!






正月5日の朝。ごろごろと寝こけている私。
31日まで会社だったけど、もう、やっと久しぶりに仕事から解放されて。もう、会社のメールなんか見てやんないんだ、と決心して5日経って。
昼まで眠れるなんて、何て幸せなんだろう・・・ 夢うつつで、ベッドでごろごろ。


あ、廊下を歩く音。トストスと、少し軽い音。
・・・あ、部屋のドアが開いた。人の気配。
誰か、入ってきた・・・?


「おにいちゃん起きて! ねえねえ起きて! 早く、ねえねえ! 早く起きはんなつまんないやんかぁ〜! 早く早く早くぅ〜!」


ああ、この声は、亜依か・・・? この時刻に家にいる、ってことは、モーニング娘。での正月の仕事も、やっと一段落したのか・・・?
私の肩を揺する手。
どんどん強くなっていって。
それでも、私は眠くて眠くて。目をしっかりと閉じて、布団を引き上げて。
起きてやるもんか。久しぶりにゆっくり寝られてるんだから・・・


ボフッ


「ぐえッ」
ベッドの上に、何かが落下。それは確実に私のボディを捉えて。
「お〜き〜て〜!」
「わ、分かった分かったって! そ、そこどいて重いッ!」
「重いだって〜?」
のしかかってきた亜依は、その言葉に、私の上に乗ったまま、思い切り身体を揺らす。
「ぐえっ。わ、い、いや、ウソ、ウソ、重くない! 重くないから・・・ ッ!」
「許さんわ! こんなかわいらしい乙女に、重いって!」
亜依が、さらに大きく揺らしてきた。
腹筋に力が入っていればよかったのだけれど、寝起きでそんな間はなかった私は、まともに亜依の体重を腹に受けてしまった。
「ごほッ! く、苦しい・・・!」
耐えられなくなった私が、身体を大きくねじって逃げる。
私の身体が、亜依の重心からずれる。
「うひゃあ!」
ひとつ声がして、ボフッ、と何かが転がる音。
そして、身体の上の重みはなくなって。
一瞬の、沈黙。
「・・・あ、亜依?」
かぶっていた布団をあわててひきはがして。
目を開ける。


目の前に、亜依の笑顔。
ごろん、と私の横に、転がって。
「おはよ、おにいちゃん」
満面の、亜依の笑顔。


それは、まるで天使が舞い降りてきたような。
そのためになら全てを捨ててもいいと思うほどの、幸せな笑顔。


「あー、おにいちゃん、亜依に見とれてるやろ?」
「は?」
「だめやで、亜依はな、まだみんなの亜依なんやからな」
そう言いながら、亜依は、もぞもぞと布団にもぐりこんでいく。
「・・・おいおい。起こしにきたんじゃなかったのか?」
「も一回、亜依も寝るわ。何だかんだ言って、亜依も疲れとるしな」
それはそうだ。正月特番に亜依はずっと出ずっぱり。テレビのブラウン管で、絶えることのない亜依の笑顔。みんなに、絶えることのない笑顔を与え続ける、亜依の絶えることのない笑顔。


「そっか。疲れたか」
「・・・ま、なぁ」
もう、むにゃむにゃとつぶやき始める亜依。小さい身体から、温かい体温が伝わってきて。
それを逃さないように、私は布団を亜依にかけ直して。


「亜依なぁ・・・ まだ、みんなの亜依なんや」
「・・・そっか」
「まだ、な・・・ 待ってる人が・・・ いーっぱい・・・ おんねや・・・」
「そっか」
それは、独り言に近く。
小鳥のように、眠りに入る亜依。仔猫のように、私の胸で丸くなる亜依。
そして、手で囲ったその内でようやく静かに素直に輝くことができるようになったろうそくのように、1人つぶやく亜依。


「だからな・・・ もう少し、な・・・ 待ってて・・・ ほしいんや・・・」


返事をする代わりに、私は、亜依の頭をそっと、そっとなでた。
わかってるよ、亜依。わかってる。


だから、今は。
ゆっくり、眠りな・・・








こんなに心の底からの願望があるのに、なぜ夢を見ないのか。




それは、きっと。
その願望を隠すことなくこのサイトで全世界へ向けて大公開しているからかもしれません。


欲望丸出しのBlackAsh、今年も、これらの夢を実現するため命をかけて発信ですッ!


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BlackAsh 不定期連載〜ファミリーマートで捕まえて Postlude2 2002/01/01 01:28
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〜 追 憶 2 〜




幸せな時間は、早く過ぎ去っていくということ。
これはいったいどういう意味なんでしょうか。なぜ、神様は、人にそんな感覚を与えたもうたのでしょうか。
幸せな時間ほど長く続いて欲しいのに。
それは、許されない所業なのでしょうか。


いくら私が思っても、時間の流れが変わることはなく。




コンサートは4時ころ終わり。
「ねえ。ランドマーク・タワー、見ようよ」
早くも日が傾きかけた中、桜木町駅に向かう途中、女の子は私に笑いかけました。多少は空いているワールド・ポーターズにでも行こうと思っていた私は、ちょっと眉をひそめて。
「えー。すごい混んでるよ?」
「それでも、見るの」
「何でさぁ。疲れちゃうよ?」
「見るの」
「だって、ほら・・・ あれ」
私は、桜木町駅からランドマークにつながる陸橋を指差します。そこには、ぞろぞろと行列が出来ていました。
「あんな中に、入るの?」
「うん」
女の子は、大きくうなずいて。
「一緒に、あの中で、お店見たいの」


スタージュエリー、ヴァンドーム青山、ローラ・アシュレイ、フォリ・フォリ・・・
疲れ切った身体で、それでも私は必死に女の子についていきました。何だか宝飾店ばっかりなんですが、やはりどの店も、二人連れのカップルでいっぱい。ろくに品物も見ることができません。
それでも、女の子は、あちらの店こちらの店、目まぐるしく足を運び。
「ねえねえ。これ、これ・・・ かわいい〜」
「ほらー! あっちで何かやってるー!」
少し先に立って、私に向かって手を振る彼女。その顔には、心からの笑顔。
私と一緒にこうして歩いていることへの、心からの笑顔。
私は、これが見たくて、今日一日を無理矢理空けたんだった、と。
今、改めて思い返しても、そう断言できる。
そんな、彼女の笑い顔。


「何やってんのー? はやく〜!」
二つに結んだ髪が、野うさぎの長い耳のように揺れて。
「はいはい・・・ 今、行きますよ」
ぼやきながらも、私はゆっくりと歩いていって。
彼女に、ついていったのでした。


時は、当たり前のように過ぎていって。




えんえんと、2時間くらいランドマークをさまよって。
ランドマークの最上階に行こうと言う彼女を説き伏せて、電車へ。
思ったほどには混んでなくて、彼女を座らせることができて。
彼女は、手すりにつかまる私を見上げて。ふと私が下を向いて、目が合うと。
「えへへ・・・」
何回も、何回も、そうして笑っていました。


みなとみらいから、東京へ。
流れる景色は、川を越えて、次第に見慣れた風景へ。
家が流れ、ビルが流れ。あらゆるものが、流れるように過ぎ去って。
時間も、流れるように過ぎ去って。。


「暗くなるの、早いね・・・」
ほんの少しのつぶやきが、今まで忘れていたことを、あまりにも鮮やかに思い出させて。

そして。


電車はガタゴトと揺れ。
いつしか、二人の口数は少なくなり。とうとう、息の音すら聞こえなくなって。
窓の外は、もうとっぷりと日が暮れた夜の7時。


それが意味することは、たった一つだけ。




新宿に着いて、東口三越裏にひっそりとたたずむフランス料理の店へ。少し瀟洒な雰囲気で。
とても、沈黙が似合うところで。


沈黙が、似合うところで。


「どう? おいしい?」
「・・・うん。とても」
「よかった・・・」
「・・・」
「・・・」


とても、沈黙が似合うところで。


何もできないまま、ただ時間は過ぎ去っていって。


食事中、何もしゃべることができないで。


嫌味なほどにおいしい食事で。




お店を出て、2人は自然と手をつなぎました。
でも、それは、昼間のとは全然違う、感触でした。


どこにもいかないで。
離れないで。


冬の刺すような風が、吹きつけました。


おわらないで。
離さないで。




ずっと。
ずっと一緒にいて。




あてどなく、新宿の南口の方を歩く2人。
ずっと、手はつないだままで。
暖かい手は、ずっとつないだままで。
けれどもそれは、確実に、いつか離さなければならない、暖かい手で。
引きのばしても引きのばしても、絶対に離さなければならない、暖かい手で。


それが、どんどんつらくなって。




けれども、その言葉は、やっぱり女の子からのものでした。


「・・・もう、帰らなくちゃ」


「・・・そうだね」


うなずく私。


「あ・・・ これ・・・ クリスマス・プレゼント」
「・・・ありがとう」
せっかく選んだプラチナの指輪も、何の意味もなくなっていた、午後の10時。




しゃべれない。
声が出ない。


今しゃべらなければ、もうしゃべれない。


それでも、声が出てこない。




帰りの電車の中でも、2人はひとつも口を開くことなく。


ただ、手だけを。
固くつないで。




涙すら出ずに、駅に着いて。
向こうの方に、見慣れた看板。
ファミリーマートの看板が、輝いていました。


とても、きれいに輝いていました。




2人が出会ったファミリーマートが、とてもきれいに輝いていました。




「・・・ねえ」
「なに?」
「ほんとうに、今日はありがとう」
「・・・」
「ほんとうに、楽しかった」
「そっか」
「ほんとうに、ほんとうに、楽しかったよ」
「うん」
「もう、きっとこんなに楽しいことなんてないよ」
「・・・さっき言ってたオパールの指輪があるでしょ? できたら、大切にしてて欲しいな」
「大切にするよ! でも、でも・・・ でもね?」


ファミリーマートの看板が、緑に青に、とてもきれいでした。


「もう、きっとこんなことってないんだ、って思うよ」
「そんなことないよ。きっとこれから、もっともっと・・・」
「そんなのない!」


ファミリーマートの看板が、車のライトに照らされて、一瞬だけ黄色く染まりました。


「ねえ、知ってるの?」
「え?」
「あたし・・・」
「・・・」
「あたし、あたし・・・」


ファミリーマートの看板が、その時、爆発したように、真っ白に染まりました。




「行きたくないよ! イギリスなんて行きたくないよ! あなたと・・・ あなたと離れるの、イヤだよ・・・!」




「好きだよ。あなたのことが好きだよ。大好きだよ・・・」




「離れるの、イヤなんだよ・・・」




真っ白なコートが、風に吹かれて。


女の子は、私を思い切りにらみつけて。


突然、身を翻して。


走っていって。




白い姿が、いつまでも。
まるでコマ送りのように、残像として私の瞳に、脳裏に焼き付いて離れずに。


確かに、彼女の瞳から大粒の涙が流れ落ちていたことが、私の記憶から消えずに。




全ては、過ぎ去っていって。


そして、最後の日を、迎えたのでした。




To be continued...


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