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- 「日々の戯言」 -

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BlackAsh 現実と妄想 2002/02/11 05:17
日々の戯言 オレ、もう・・・ もう・・・
だめなのかしら
ちょうど昨日のこと。
疲れ切って帰宅する毎日。もう、真剣度120%で転職を考えつつ、今日もニュースサイトを巡っていて。
大好きなサイトの一つ、カトゆー家断絶が更新されているのに気付き、クリック♪ 新しく出来た戯れ言が楽しみで、日参させてもらってます。
今日の戯れ言は・・・ お? なになに?


おたく度チェック


なるほど。自分のオタク度をチェックするサイトですか。カトゆーさんもやってますね。やや萌え度が高いようで・・・
ふむ。これは私もやってみる必要があるな(意味不明)。


というわけで、軽い気持ちで、ちょっくらやってみたんです。名前欄・・・ Black、と。
ラジオボタン形式か。カチカチカチ、と・・・
さて・・・ 結果は?


Blackさんお疲れ様でした。あなたの総合おたくパワーは935パワー です!
あれ? ちょっとばかし高くないか?

あなたのマニア度は154パワー !手の施しようがありません。
もはや何を言ってもムダですね。あなたはあなたの道を突き進んで下さい。
それが神に与えられたあなたの使命です!

て、手の施しようがないのかよ! ていうか神から? 待ってくれオレは神とコンタクトを取ったことなど・・・ッ!

あなたの危険度は146パワー !超キケン人物です!
もはや止めません。と言うより、止められません。好きな事をやって下さい。
どうせやるなら歴史に残るような大きい事をやるのもいいかもしれません。
当方は一切関知しませんが・・・。

もしかして近い将来全国紙三面記事デビューが近いのかオレ? ま、まだオレには未来が・・・ 子供どころか奥さんすらいないのに・・・ッ! ていうかもうそんなものはゲットできないということなのか・・・?

あなたの萌え度は168パワー !萌えに萌えています!もうヤバいくらい!
あなたにはもう現実の女性は見えていない事でしょう。でもそれでいいんです。
そのキャラは一生あなたの恋人でいてくれますから!

現実が見えないのかオレ! もう2次元しかダメなのか? やっぱり奥さんと子供はゲットできないのか?


つーかここにはホントなら「さわやか度」の解説が来るはずなんだが何でないんだ? 思い切り空白なんだが?
もしかして、マイナス43パワー、つまりゼロよりも低い数字をたたき出したオレにとってさわやか度なんて不要なのか・・・?


迷惑度133パワー !あなたの迷惑度はノストラダムス級です!
1999年に世界は滅ぶと言われて、お金を使いまくったり、
犯罪をおかした人は何人もいる事でしょう。あなたの迷惑度は
それと同じで、他人にまで大きな影響を及ぼす程強大です。
その力を下手に使うと某宗教団体のようになってしまうので、
取り扱いには十分ご注意を。

・・・オレ、もう一般社会では生活できないのか。そんなに迷惑をかけていたのか。そうか・・・
ごめんtmash、MIST。オレ、きっと君たちにすごく迷惑をかけていたよ。

あなたの煩悩度は152パワー !あなたはとんでもない煩悩の持ち主です!
108つの煩悩を除夜の鐘で祓うと言いますが、あなたの煩悩は
それだけで消えるようなものでは無いでしょう。むしろ、あなたのエネルギーは
煩悩にあるといって過言ではありません。それを失う事は死を意味します。
そうならない為にも、このまま煩悩で生きていくのが良いでしょう。

・・・もう、だめぽ。

あなたの潜在能力は225パワー !素晴らしい才能です!
あなたはオタクとしての才能を誰よりも強く持っていながら、それがまだ眠っている状態です。
さあ目覚めるのですBlackさん。オタク社会はきっとあなたを快く迎え入れてくれる事でしょう!

   ☆Blackさんお疲れ様でした☆



・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・


ノオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!


何ですかこの数値はッ! オレはもう異常ですか! 社会人、いやもはや人間としての限界値を超えているですか!
真面目にやったのにこれかよ! ていうか真面目にやってこれはやばいよ!


オレはもう終わりですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!




はぁはぁ。
いや、オレにもまだ意地がある。
萌え度のところで『あなたにはもう現実の女性は見えていない事でしょう』とか言われてるけど!
いや、まだだ。まだ終わらんよ・・・
オレだって、現実の女性は見えるんだ! 大丈夫!


上の結果を見て、「うわ、Blackとかもう終わりだな」とか思った者たちよ・・・
見るがよい! オレだって現実の女性に十分目を向けることが出来るんだッ!!











平穏な日曜日、休みを強引に取って、この昼下がりにゆっくりと流れる時間を味わって。
「ふぅ」
とりあえずニュースの更新を終えて、私はタバコに火を点けました。紫煙を深く吸い込み、吐き出して。もう、何百回、何千回も繰り返してきた、この動作。
”ああ・・・ 亜依に怒られるな”
タバコが大嫌いな亜依。私が煙草に火を点けようとすると、『あかんねん吸っちゃあ!』と、私の手からタバコを取り上げてしまう亜依。『お兄ちゃんの肺の中、もう真っ黒になってるんちゃうか?』と、腰に手を当てて私をにらみつけて怒る亜依。


今年も、誕生日には会えませんでした。
やっぱり、番組の収録かなんかで、ホテルに泊り込み。家に帰ってこなかったのでした。

私は、タバコを灰皿に置いて。消そうとした手は、もったいない、という思いにさえぎられて。暖房と煙草の煙でよどんだ部屋の中、紫煙はやがて一本になって、微かに揺れながらも上に上っていって。
”元気でやってるかな”
亜依のことを考えて。
そして、ふと思い出してパソコンのCD-ROMドライブを起動させます。しばらくして、陽気な歌声。


『一年中がひなまちゅり〜ィ♪』


ようやく聴く暇が出来た、ミニモニ。の新曲『ミニモニ。ひなまつり!』。


”何と言うか・・・ すごい歌だよなぁ”
ひなまちゅり、かぁ。まあ・・・ ミニモニ。らしいよなぁ。
この曲に合わせて、一生懸命にこにこしながら踊っている彼女たちを思い浮かべて。思い切り口をとがらせてる亜依を思い浮かべて。
思わず、苦笑。


「何がおかしいねん」
「うわっ」
あわてて椅子を回して振り向くと。
部屋の戸口。両手を腰に当てて、ほんの少しだけ顔を左側に傾けて、私をまっすぐにらんでいる亜依がいて。ちょうど今帰ってきたばかりなのか、Sサイズの紺色のコートを着て、薄いグレーのリュックを背負ったまま。
いきなりなことに固まってる私を尻目に、亜依はつかつかと歩み寄り、灰皿のタバコをつまんで、ぎゅっ! と思い切り力を込めて、消してしまって。
「部屋けむい。窓、開けや」
「さ、寒いっての・・・ うわ」
私を無視して、カーテンを開けて外の空気を呼び込んで。2月の、肌を一気に凍らせる空気。
「ほら、すっきりしたやろ?」
「いや、むっちゃ寒いんですけど」
「こんなけむい中にいるのがあかんねん。タバコは吸っちゃあかんって何回言うた? だいたいな、今年は禁煙するって言うとったやん」
「亜依の前では禁煙、だったぞ」
「んじゃあ今から禁煙や。亜依が帰ってきたねんで」
「・・・はいはい」
ため息をつきつつ、窓を閉めます。足が冷えて冷えて。
そして、改めて、お帰りのあいさつをしようと振り返った瞬間。


『できればまいにちひなまちゅり〜♪』


スピーカーから、何とも言えないタイミングで、脳天気な歌声が響いてきました。
「うわ・・・ お兄ちゃんそれ消しや」
顔をしかめて、亜依は首を振りました。苦笑しながら、私は音楽を消しました。
消した後、一瞬の静寂。


「はぁ・・・」


亜依の、ため息。
微かに空気を揺らした、亜依のため息。
少しだけうつむいて。そのくるくるした目を伏せて。リュックをしょった肩を落として。
亜依の、ため息。


「どうした?」
「・・・え? あ、ううん。なんでもないねん」
「疲れちゃったか?」
「なんでもない」
なんでもありそうな顔で、亜依が首を振って。それでも、きゅっ、と引き締められた少しだけ薄めの唇は、絶対に話さないぞ、という決意がにじみ出ていて。


また、静寂。


く、暗い・・・
この雰囲気を何とかなごませなければ。
私は、引出しの中から、かわいらしい赤のリボンがかけられた小さな包みを取り出しました。
「亜依」
「・・・ん?」
「遅くなっちゃったけど・・・ 誕生日、おめでとう」
包みを差し出して・・・
あれ?
・・・亜依?


「・・・ありがとな」
ふっ、と一瞬だけ微笑んで、亜依はそれを受け取りました。
そして、その包みにかけられた赤いリボンを、じっと見詰めて。
そのまま、微笑んでいるような・・・ 仕方なく微笑んでいるような・・・ そんな、表情を。
14歳になった亜依。また一つ、大人へのステップを刻んだはずの亜依。


でも。
彼女の顔をかすめた思いは。
明らかに、嬉しがっていない、ということで。


どうしたの・・・
訊きかけて、私は口をつぐみました。
亜依が話さないんだ。亜依が話そうとしていないんだ。
亜依が、話したくないと思っているんだ。


「これからも、元気でやっていくんだぞ」
そう言って。そう言っただけで。
私は、再びパソコンに向かいました。音楽をかけます。今度は、DragonAshの新曲を。アップテンポのリズムが、身体を動かしたくなるようなリズムが、少し大きめの音量で部屋中に満ちて。
そのまま、私はまたニュースサイトを巡り。
亜依は、部屋から出て行くこともなく、私のベッドに腰掛けて。
じっと、プレゼントを見詰めて。


見詰めて。


見詰めて。


「・・・お兄ちゃん」
「んー? 何だ?」
関心がなさそうに、私は答えます。
そのくせ、心臓の鼓動は早まっていて。
背中の気配が動いたから。亜依が、口を開いてくれたから。


「亜依な・・・ このまま、やってけるんやろか、と思って」
「・・・え?」
「いつまで、やってけるんやろか、と思ってん」
「芸能界でか?」
「・・・ん」
「何だ、大丈夫だよ。亜依なら、元気にやっていけるって」
「・・・」
「どうした? 心配なのか?」
私は、椅子を回して、ベッドに座っている亜依に向き直りました。
亜依は、相変わらずうつむいたまま、プレゼントを見詰めていました。
そんな亜依に、私はできるだけ明るい調子で声をかけて。
「大丈夫だって。今までもやってこれたでしょ?」
「・・・」
「な? 心配するなって。今回の新曲も、ホントかわいいじゃないか」


空気が、一瞬固まって。
それがガラスのように砕け散る音が聞こえました。


「それが・・・ それが、あかんねん!」


やおらベッドから腰を上げると、亜依は私をまっすぐに見詰めて。
プレゼントの箱が、床に落ちて。


「亜依、いつまで子供でいられるんやろか?」
「え?」
「だって・・・ 亜依は、亜依は・・・ 子供だからかわいい、ってみんな思っとるんやろ? ちっちゃくて、いっつも子供子供しとるから、かわいいね、とか言うんやろ?」
「・・・」
「みんなかわいいかわいい言うけどな・・・ 子供だからかわいいって。みんなそう思っとるんや」
「・・・」
「でも・・・ でもな・・・ いつまでも子供じゃいられへんやろ? 誰だって大人になるやん。んで、みんな大人らしくなってくやん・・・ 今年だって亜依はまたひとつ年とった。だから・・・ もう、きっと『ひなまちゅり』なんて歌えへんようになるかもしれんやんか・・・」


へたっ、とベッドに、力が抜けきったように、腰を落とした亜依。
うつむいて、そして、ベッドの脇に落ちたプレゼントを拾って、またそれを見詰める亜依。
漠然とした不安、おぼろげに見えてくる終わりにさいなまれたその瞳。


そんなことに気付いてしまい。
そんなことを考えなければいけない。


私は、一瞬。
芸能界という世界に気持ち悪いくらいの怒りを覚えて。


亜依に。
愛らしい亜依に。
元気いっぱいの亜依に。
こんなことを考えさせてしまった芸能界。


私は、亜依に見えないように両の手を思い切り握り締めて。
ひとつだけ、深呼吸して。


「亜依」
「・・・」
「亜依、本当にそう思うの?」
「?」
「亜依は、子供だからかわいいの?」
「・・・」
「亜依は、そのままの姿でがんばってるからかわいいんじゃないの?」
「・・・え?」
「亜依は、与えられた役割・・・ 今は、子供のシーンを演じるのが亜依の役割なのかもしれないけれど・・・ その中で、精一杯自分を出しているんじゃないの?」
「・・・」
「それとも、撮影とか取材とかで、亜依は手を抜いたりしてるの?」
「ううん。そんなことせえへん!」
「うん。そうだよね・・・ それなんだよ」
「?」
「きっと、みんなは・・・ 中には子供だからかわいいって思っている人もいるのかもしれないけど・・・ みんな、亜依が精一杯がんばってる姿を見て・・・ 亜依が亜依のままがんばってる姿を見て、それをかわいいって思っているんだよ」
「・・・そうやろか」
「そうだよ。そうじゃなきゃ、人気なんて出ないよ」
「・・・」
「だから・・・ 亜依が大人になっても、自分のままで精一杯がんばること・・・ それさえ忘れなければ、きっと、亜依はやっていけると思う」
「・・・ほんまに?」
「うん。そうだよ」


亜依は、ふと目を落とすと、持ったままのプレゼントの赤いリボンの結び目に、指を重ねて。
それを、2、3度なでて。


「なあ」
「ん?」
「これ、開けてええ?」
「もちろん」


中に入っていたのは、きらきらと白く小さい輝きが連なった、銀色のブレスレット。
亜依は、それを見て、目を丸くして。
「うわ・・・ あ」


いそいそと、左手にブレスレットをつけて。
蛍光灯の光に、それをかざして。きらきら、ちらちらと、まるで星団のように細かく光るその輝きを見詰めて。
その瞳は、もう、さっきプレゼントの箱を見詰めていたそれではなく。


「きれい・・・」
「気に入った?」
「うん。むっちゃ気に入った」


かかげた腕を落として、私に微笑みかける亜依。


あ。


スルリ


その腕から。
ブレスレットが落ちて。
布団の上に、ブレスレットがそのきらめきを残して落ちて。


「・・・あ」
「あらら。ちょっと大き過ぎたかな・・・」
もう一度つけて、手を下に。


スルリ


やっぱり、落ちてしまう。


「あらら・・・ ごめん。大き過ぎたみたいだ」
「そっか・・・」
亜依は、ベッドの上のブレスレットを手に取って、その小さな手のひらに載せました。
しばし、それを眺めて。
あ、微笑った。


そして。
私をまっすぐに見詰めて。
元気いっぱいの瞳で見詰めて。


「これ、つけられるくらいの大人になるまで待っとけ、ってことなんやな」


最高の、笑顔。


「・・・それはいい考えだね」
「やろ? んふふ〜」
亜依は、ブレスレットをそっと箱にしまって、元通りにリボンをかけなおしました。
「ありがとな、お兄ちゃん」
「いえいえ。どういたしまして」
私は、その笑顔に満足して。とても満足して。
タバコを手に取りました。
「あー! あかんって言ったやろ!」
「うわ、いいじゃんか。な? 1本だけ?」
「あかん! 絶対あかん!」
「・・・はぁ〜」
「身体に悪いんやってわからんの? んもう・・・」
亜依は、ずっとしょっていたリュックを下ろしました。
ぼそっ、と、つぶやきながら。


「ったく・・・ おちおち大人にもなってられへんわ」












な? な? 大丈夫だろ? ちゃんと現実の女性に目が行ってるだろ?









もう、ホントにダメなのかなぁ、オレ・・・


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