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BlackAsh イギリス、EU離脱へ(後編) 2016/06/25 20:57
日々の戯言 イギリスのEU離脱問題について雑駁ですが解説を加えます。前後編構成。
前編は「今回のイギリスのEU離脱選挙の状況」を解説します。
後編は「イギリスのEU離脱が日本に与える影響」を解説します。
こちらは当サイト記事「イギリス、EU離脱へ(前編)」の続き、後編です。イギリスのEU離脱に関して「今回のイギリスのEU離脱選挙の状況」を中心に解説した前編の後にお読みください。

前編の最後に書きましたとおり、当サイトの記事投稿システムに文字数制限が存在したということをサイト運営15年目にして初めて知ったわけです。個人的には、これだけでもこの記事を長々と書き続けてきた意義があったと言えますね。

さて、2016年6月23日(日本時間24日未明)に行われた「EU離脱の是非」を問うイギリスの国民投票で離脱派が多数を得て、このたびイギリスはEUから離脱するということになったのですが、これで何で日本がこんなひどいことになったの、というところですね。こちらは短期的な影響と長期的な影響に分けられますが、長期的な影響はまだまだ予測しにくいのでひとまず短期的な、つまりは金曜日に起こったことの解説です。

<イギリスがEUから離脱することによる日本への短期的な影響>
これは極めてシンプルで、難しいことはありません。かつての「大英帝国」の栄光は霞み、国力も衰えつつはありますが、依然としてイギリスはEU加盟国内で第2位のGDPを誇る強国です。これがEUから離脱したらどうなるか。当然EUの力が落ちます。そして当然、EUという経済共同体に属していたイギリスも、EUという後ろ盾を失うわけですから単純に考えて力が落ちます。つまり、EUの通貨ユーロ、そしてイギリスの通貨ポンドの両方の力が落ちます。
普通こういう「大事件が起こりそうな時」には、それなりの予想を立ててリスクをできるだけ回避するため事前に対策を打つものですが、今回のイギリス国民選挙の結果は情勢が拮抗していてどうなるかわからず、特に直前に「残留派優勢」のほうが流れていたこともあり、正直な話、投資家の間では「何だかんだで残留するんじゃないか」と考えていた人も多かったようです。ある種の油断がそこにありました。
そこにこの青天の霹靂、上記のように力が落ちる通貨に投資していた人は、慌ててそのカネをほかに振り向けようとします。世界中を見渡してほかに投資対象となり得る通貨は、基軸通貨としてその地位が確立しているドルと円しかありません。アメリカはイギリスと地理的にも経済的にも関係が密接。そこで、消去法的に「円への逃避」が勃発し、円が買われて円高に陥ったのです。これは一種のパニックであり、離脱ヤバイポンドユーロ売れというシンプルな図式です。

そして、EUとイギリスの力が落ちるということは、ヨーロッパの経済が先行き不透明になるということを意味します。実際に国民選挙前には、特に残留派から「イギリスがEUを離脱するとこれだけの国力低下と景気低迷に陥る」などの脅迫にも似た試算が盛んに喧伝されていました。イギリス財務省の試算によれば「イギリスがEUを離脱すると控えめに見ても52万人が失職、GDPも3.6%近く低下する。より深刻な見方をすれば最大で82万人が失職し、GDPは最大で6%低下する」と発表していました。また、EUにおいてもイギリスの離脱による影響は甚大です。EUのGDPは17%も落ち込み、イギリスが国力に応じてEUに拠出していた予算として1兆2000億円、実にEU予算の12%が失われるということです。チャイナ・リスクの不安が払拭しきれていない中、イギリスのEU離脱というリスクに世界経済が耐え切れるか。世界はこれが現実化するということに大きく動揺しました。
加えて日本に限って言えば、対イギリスへの投資額が地味に大きいという状況があります。JETRO対外直接投資統計によれば、2015年度の日本の対イギリス直接投資額は約1兆7000億円、対アメリカに次いで第2位という巨額な投資が行われています。また、帝国データバンクがこのたびのイギリスEU離脱という選挙結果を受けて緊急に集計した「イギリス進出日本企業数(pdf)」によれば、この6月時点で1,380社が日本からイギリスに進出しています。EU経済圏で活動するための窓口としてイギリスが選択されているのです。これが、イギリスのEU離脱により戦略の練り直しを余儀なくされるのです。
そしてさらに、日本は現在アベノミクスの下でやや円安気味に為替相場を持っていこうとしていますが、上記のとおり一気に円高に振れました。日本は輸出が盛んですが、円の価値が上がると日本製品の値段も上がり輸出に不利なのは当然の理です。

これらの「イギリスのEU離脱が日本に与える影響」に株式市場は敏感に反応し、日経平均や海外への輸出を軸にする企業の株価が軒並み大幅に下落したのです。これが、金曜日に起こったことの簡単な解説です。
この傾向はしばらく、少なくとも2、3週間は継続するだろうと思われます。いくら日本政府と日銀が為替相場の安定を図る対抗策を打ち出したとしても、そう簡単に落ち着くものではありません。全世界の株式為替が上記と類似した乱調を呈することは間違いなく、市場の混乱は短期的に継続することでしょう。底を打ったと見てちょいちょいと対抗的な戻しは入ることでしょうが、二番底三番底があると見てよいでしょう。

そして市場の混乱がひととおり収まった時、日本も含めた世界は改めてイギリスのEU離脱が引き起こす問題に直面することとなるのです。

<イギリスがEUから離脱することによる日本への長期的な影響>
これは正直予想がつきません。これを予想しろというのは酷な話と言わせてください。今全世界のアナリストたちが、正真正銘のプロフェッショナルな人たちが一生懸命これを分析している最中です。きっともうしばらくしたらそれなりの見通しが付いてくることと思われます。
しかしながら、今後主要な問題点として何が生じてそれがどのようになるか、その要因の箇条書きくらいならば、今の私でもできると思います。まだたった200か300そこらの断片的な情報にしか当たっていない中ではありますが、ざっと検討してみましょう。

1. 離脱の方法
そもそも、と言っては何ですが、このイギリスのEU離脱の選挙結果は、イギリス国内で法的な拘束力はないとされているそうです。したがって、この選挙結果に逆らって、イギリス政府がEUから離脱しないという選択も可能といえば可能です。ただ、それは間違いなくイギリス国民が許さないでしょう。既に、残留を主張してきた英キャメロン首相は10月での辞任を表明しました。新しい首相と内閣がEU離脱の手続を行うべき、とする判断です。その後任は、上記のページにも紹介されている離脱派の首魁である前ロンドン市長ボリス・ジョンソンが最有力でしょう。このイギリスのEU離脱問題には、政治的な思惑と駆け引きも色濃く絡んでいました。紙幅を費やして述べることはしませんが、ジョンソン前ロンドン市長が次期首相とも目されていたところ、彼よりも若い、キャメロン政権下で辣腕を発揮したオズボーン財務相がキャメロンの後任とされる流れが作られつつありました。その状況の一発逆転を図るべく、キャメロン首相が前回の総選挙においてどうしても単独政権を打ち立てたいがために公約として掲げたこの「EU離脱を問う国民投票」、そう、政権がコントロールすることのできない国民投票などという危険な手段を安易に選択したキャメロン首相の「ミス」を、ジョンソン前ロンドン市長が確実に咎めたという図式が当てはまるのです。

さて、やや話がそれました。イギリスはこれからEUを離脱する方向で進んでいくことになりますが、イギリスがEUから離脱する、と言っても、実は「どのように離脱するか」はまだ決まっていません。何せEUから加盟国が脱退した先例はなく、ただ唯一、1985年に、EUの前身であるECからデンマーク領グリーンランドが(デンマークから自治権を獲得した際に)脱退した例、つまり加盟国の一部地域の脱退という例があるくらいです。EU条約第50条にEUからの離脱に関する条文はありますが、脱退通告をして2年間協議しましょう、とあるのみで、どう離脱するかの規定は他にありません。
したがって、EUからの離脱の形式は決まっておらず、そうであるならば、我々が今単純に想像している「完全離脱」つまりEUとイギリスは完全に別の国家として位置付けられる方法のほかにも、EUとEU非加盟周辺国との関係として、つまり「イギリスが将来EUを離脱した時にEUとの間で取り得る関係」として、「ノルウェー・アイスランド・リヒテンシュタイン形式」と「スイス形式」というものがあり得るのです。
ノルウェー、アイスランドそしてリヒテンシュタインはEU非加盟国ですが、ざっくり言えば「欧州経済領域(EEA)」に加入しています。そのために必要な手続は「欧州経済領域協定」への調印です。このEEA内では、基本的に人、商品、サービス、資本の移動の自由が認められます。つまり、イギリスがEUを脱退してもEEAに加入すれば、EUに所属していた時と同様に、人やモノ、カネについては単一市場として取り扱うことができるのです。
また、スイスはEUにもEEAにも加入していませんが、代わりにEFTA(欧州自由貿易連合)に加盟しています。EFTAとは、EU非加盟国がヨーロッパ市場での交易を発展させるため他ならぬイギリスが音頭を取って作り上げた貿易共同体です。加盟国はその後次々とEUに加盟していったのでみんなEUの方に移り、今は上で挙げたノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインそしてスイスしか加盟国がいません。これによれば、EFTA加盟国はEUの一定の市場において単一市場としての取扱を受けることができるとされています。
上記のうち、移民問題が今回の背景にある以上、イギリス新政権としては、人的移動が自由とされているEEAに加入するという選択をすることはなさそうです。EFTAに加盟するか、それともそれ以外の方法でEUとの関係を構築するか、これは全く将来のイギリス新政権とEUとの交渉によるところとなります。この交渉の結果は、今後の世界情勢に大きな影響を与えることとなるでしょう。

2. 他のEU加盟国の動向
イギリスがこうしてEUを離脱する決断をしたということで、イギリスと同じような問題にあえぐ国、つまり「EU圏内で移民をたくさん受け入れている国=比較的豊かな国」が同様にEUを離脱する機運を見せる可能性があります。EU離脱ドミノとでも言いましょうか。これが生じるとEUはガタガタとなり、ヨーロッパどころか全世界経済に深刻な影響が生じることでしょう。
このイギリスのEU離脱は、一種のポピュリズムの発露として受け止められることがあります。即ち「自国の権利を取り戻せ」「強い自国の復権」という論調です。皆様は既にこの主張を耳にしたことがあるでしょう。現在アメリカ大統領選挙で大旋風を巻き起こしているドナルド・トランプの「アメリカの名誉ある孤立」的なアジテーションです。イギリスでも残留派が離脱派特にボリス・ジョンソンを評して「髪型のましなトランプ」と批判するなど、トランプと離脱派の類似性を指摘していました。そして離脱派が勝利したわけですから、保守右翼一派にこのイギリスの選挙結果は心地よく響きます。EUで豊かな国の筆頭であるドイツやフランスでは昨今極右政党が力を増してきておりまして、この結果を受けて自国でも国民投票の実施をと呼びかけているのです。やはり焦点は極右政党として移民排斥を主題に挙げているようですね。
しかしながら、私個人の意見としては、イギリス以外の国、特にドイツやフランス、イタリア、オランダといったところがEUを離脱することにはならないと踏んでいます。ドイツやフランスはこれでEUのメリット、通貨安のユーロから生じる輸出産業の利益を大きく享受し得る立場にあります。さらに言えば、イギリスはEUに属してはいましたが通貨はEUの単一通貨であるユーロを導入せずにポンドのままでした。だからこそ離脱という選択肢を取り得たとも言い得るわけで、自国通貨をユーロとしている国がEUを離脱しようとすると、自国通貨の再構築から始めなければならないわけで、これは大変なコストがかかることでしょう。
ただ、上述したとおり、EU加盟国において国民投票という手段が実現した場合、この分析は当てはまりません。今回のイギリスでの結果を見るまでもなく、そして見ればますます、国民というものは現実的な判断からは無縁の存在であり、自らの身の回りのことのみに腐心する存在だからです。

3. 関税障壁
イギリスがEUを離脱すると、今までEUの単一経済圏としてEU加盟国との取引にはかからなかった関税が新たに生じることとなります。これがイギリスやEUの障壁となり、イギリスの低迷に繋がるのではないかと考えられています。
これもイギリスとEUの交渉次第ではありますが、正直に漠然とした予想ではありますが、そこまで大きな関税が設定されるとは思えません。EUにとっても、イギリス経済が深刻な低迷に陥るのは長期的に見て損失です。イギリスが離脱したことを受けてEU離脱ドミノが生じないように、離脱した国に対して懲罰的な態度を取るかどうか、これは現在EU首脳がいろいろと考えているところでありましょう。しかしながら、結局最後はお互いのダメージを軽減させるために、そこそこの話で収まるのではないかと勝手に予想しています。

4. ロンドンの地位
ロンドンは世界の金融センターとして現在確固たる地位を確立しています。しかしそれは、EU圏内においてある国でライセンスを取得すればそれがパスポート的なものとなりEUの他の国でも自由に営業ができることに拠って立ちます。即ち、イギリスのEU離脱により、ロンドンに進出している世界の金融機関がEUにおける窓口を失うので、改めてEU加盟国内に拠点を作りにいくことにより、ロンドンの地位が低下してしまうという不安要素があります。選挙結果が出る前ではありますが、金融機関はイギリスのEU離脱に慎重なスタンスであり、欧州最大の銀行HSBCは「イギリスがEUから離脱したらロンドンの主要業務がパリに移るだろう」と述べ、世界最大の投資銀行ゴールドマン・サックスの幹部は「イギリスのEU離脱により時間とともに銀行がロンドンからいなくなる」と述べています。それはロンドンが金融センターとして機能しなくなるということであり、イギリスの主要な産業である金融業が立ち行かなくなるということを意味するのです。
確かにライセンスがこのまま維持されるとは思えませんので、ロンドンに拠点のある金融機関はEU加盟国の主要都市、たとえばパリやフランクフルトに拠点を作り直すこととなるでしょう。それでロンドンに閑古鳥が鳴くことになるか、これはイギリスの対策次第です。従来のタックスヘイブン的な優位性をより強くアピールしていくなど、対策はそれなりにあるでしょう。
ただ、そもそもEUに加盟していなければ金融センターとしての役割が果たせないかというと、じゃあスイスはどうなんだという具体的な例があります。また、金融センターとしての地位は、単にある一定地域の窓口となれることだけではなく、その場所で金融のプロたちが積み重ねてきたノウハウというものがあると思うのです。ロンドンは伝統的に世界の金融の中心であり続けました。そこで培われてきた金融技術と人脈は、一朝一夕に消えてなくなるものではないでしょう。

結局どうなるの、というところですが、リーマン・ショックの衝撃まで行くかと問われれば、そこまではいかないんじゃないかな、と思っています。上記は楽観的な見方を強調していますが、こんなことは既にイギリスとEUの両首脳はとっくに考えていることです。この結果を生じさせたのはイギリスにおける「国民の意思」ですが、繰り返しになりますが、国民というものは古来いちいちこんな「現実的なこと」をつらつらと考えるものではありません。私個人としても、日本国民としてこんなことを日ごろから考えているわけではありません。そう、一日本国民としては、遠いイギリスのことよりも、むしろ足元の参院選についてどうしようかと考えるべきなのでしょうが、民、民、えーと民なんとか党とかいう人たちの言っていることは「そんで?」としか言いようがなくよくわかりません。なべて国民というものは自国のことを詳らかに分析して考えることをしないのであり、それはイギリスにあっても同じなのではないかと、今回のこの結果を概観して改めて思ったのです。

以上長々と、イギリスのEU離脱に関して雑駁ではありますがまとめてみました。一日以内に超特急で物したので、正直腱鞘炎の悪化どころか左手までやられてきました。ワードにしてまるまる9ページとか、もうこんな長い記事を書くのはこりごりです。今日はこれからゆっくりとイングランドの伝統ハロッズの紅茶を嗜んで休憩し、深夜になったらスコットランドのウィスキーを舐め、えーとウェールズと北アイルランドの名産品がネギとジャガイモしか思いつかなかったのでひとまとめにしてケルト神話でも手にして、イギリスのこれからに思いを馳せることとします。


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BlackAsh イギリス、EU離脱へ(前編) 2016/06/25 20:48
日々の戯言 イギリスのEU離脱問題について雑駁ですが解説を加えます。前後編構成。
前編は「今回のイギリスのEU離脱選挙の状況」を解説します。
後編は「イギリスのEU離脱が日本に与える影響」を解説します。
全世界を震撼させたニュース、と言っても過言ではないでしょう。2016年6月23日(日本時間24日未明)に行われた「EU離脱の是非」を問うイギリスの国民投票で離脱派が多数を得て、イギリスのEU離脱がにわかに現実味を帯びてきました。
開票100%の結果は、イギリスBBC国民投票速報によれば

離脱:17,410,742票(51.9%)
残留:16,141,241票(48.1%)


と、わずか130万票ほどの差。投票率は無効票を除いて72.2%、事前には80%近くと予想されていたようですから、予測を下回ったと言えます。当日のロンドンを含むイギリス南東部、これは事前調査によればEU残留派が多い地域なのですが、かなりの悪天候だった産経新聞)ようで、
『南東部などは23日にかけて悪天候となり、ロンドン市内では大雨で河川の水があふれ、道路が冠水するなどの被害が出た。』
土砂降りの大雨の中、残留派の選挙への出足が鈍ったという可能性もありますね。ただ、UK Political Infoというウェブサイトによれば、2001年以後のイギリス総選挙の投票率は軒並み70%を切っていたようですので、今回は高投票率と言えましょう。つまり、離脱派の勝利に文句が付けにくいということになります。

この結果により、冒頭に記したとおりまさに世界は震撼しました。まずは当日最も早く日が昇った日本の金融・為替市場において。
日経平均株価は24日の終値が14,952円02銭、前日比で1,286円33銭、実に7.9%の安値を付けました。下落率は実に16年ぶり、あの東日本大震災直後の11%下げ以来の数字です。10時過ぎから雲行きが怪しくなってきて、11時過ぎには揺らぎ始め、11時40分ころにBBCが離脱派勝利の速報を流した瞬間に堰を切ったように暴落、ちょいちょい買戻しが入るも流れに抗することなどできませんでしたね。下がりに下がって日経平均先物にサーキット・ブレイカー(取引一時停止)が入るなど、荒れに荒れた相場でした。市場関係者は、何だかんだで残留すると読んでいたようです。
円も急騰、106円あたりから金曜日のわずか3時間で一時99円台まで暴騰しました。1日で7円の値動き、変動率は史上最大です。
そしてこの記事を書いている今現在円は102円台、ユーロそしてポンドが雪崩を起こしています。金曜日にはドイツ株が一時10%程度の下落、ロンドン株が一時8%の下落、まさに阿鼻叫喚でしたね。

さて、いったい何が起こっているのか、ということですよね。しかしながら、これをひとつひとつまともに書き起こしますと私の腱鞘炎の悪化が避けられません。このイギリス国民選挙の背景つまり「なぜEUとイギリスは対立しているのか」の説明として、困った時のとりあえず感満載のWikipedia大先生を挙げ、これを補足して、以下Wikipediaによらない論点表と対立点を箇条書きでわかりやすくまとめます。

<離脱派と残留派の論点>
1. 移民問題
これが最も取り沙汰される論点です。EU域内は「人、モノ、サービスの移動が自由」という原則に支配されています。ざっくり言えばEU域内には国境がないようなものですね。したがって、EU加盟国のうち貧しい国の人々はこぞって豊かな国に移り、移民先で稼いで自国に送金するという働き方をします。この貧しい移民が目指す国がイギリスとドイツです。たとえばルーマニアやブルガリアとイギリスとの賃金格差は、イギリスでの最低賃金で働いたとしても実に5倍、下手すれば10倍くらい稼げるかもしれないそうです。しかもイギリスの社会保障は他のEU加盟国よりも手厚く、それが移民にも適用されるのです。移民でも無償で医療と教育が受けられてしまうのです。そりゃあ移民しますよね。この二国だけからでも年に5万人くらい来ますよね。
そして、より深刻なのが「EU域外からの難民」です。ドイツでシリアからの難民を含めた難民受け入れ問題が論じられるようになって久しいところですが、アフリカからはるばるとフランスまでやってきた域外難民は、社会保障がより手厚いイギリスに密入国を試みます。これが極めて厳しい状況を生み出しているのです。こうしてイギリスはEU域外からも含めて年に30万人ほどの移民を受け入れる移民の国となり、自国民が受けるはずの社会保障の恩恵が移民によって薄められていきます。その社会保障費はイギリス国民の税金によって運営されているのに。
これに対してイギリス政府も真剣に対抗するようになり、せめてEU域外からの移民は止める必要があるとして、イギリスのドーバー海峡を臨むフランス北部の港町カレーの難民キャンプ、ここの審査を厳しくすることにより、EU域外からの移民がイギリスに流入することがないようフランスと交渉しているのです。
そして、将来もしかしたらトルコがEUに加盟するかもしれないという状況が問題をよりクローズアップさせています。トルコはEU加盟国と比較すると貧しい国にカテゴライズされます。加盟したら間違いなくトルコそしてその隣国であるシリアからさらに大量の移民がイギリスとドイツにやってくる。この漠然とした不安が、離脱派の大きな波を巻き起こしたのです。

離脱派:移民を止めるためにはEU離脱しかない。
残留派:離脱するとフランスのカレーでやろうとしている国境管理がイギリス本土に移るのでむしろ移民の存在が身近になる。

2.雇用問題
上記のように移民が流入すれば、当然イギリス国内の仕事はイギリス国民と移民との奪い合いとなります。移民は元が低賃金ですから、多少安くても(自分の国の賃金よりずっとマシなので)何でもやります。ただ、移民は資格業など手に職系の仕事ではなく、単純労働系しかこなせないので、特に低賃金労働について移民の進出が見られるところです。いわゆるブルーカラー系労働者と真っ向から対立します。

離脱派:移民から雇用を守れ。EU関係の雇用がなくなったとしても、たとえば英連邦所属のタックスヘイブンを使って投資業を発展させるなど、方法は他にもある。
残留派:EUと関連する雇用が相当量あるので離脱は悲劇を招く。特に金融市場でロンドンが孤立すると大量の雇用が失われる。

3. 法律問題
EU法はEU加盟国の法令よりも優先して適用されます。権利章典の国イギリスは、法律というものを自ら発展させてきた自負があるのです。そして、EUで加盟国が頭を突き合わせて協議していると、必要な法律が遅々として制定されず、また加盟各国の強烈なロビー活動により他国にマッチしない内容のEU法が出来上がることもあります。

離脱派:イギリスの法律を、イギリスの裁判権を取り戻せ。
残留派:イギリスから率先してEU法を作っていけばよいことだ。

4. 主権問題
そもそもイギリスがEUに加盟する時も問題となりました、いわゆる「欧州懐疑主義」の問題です。EUが加盟各国の政策までコントロールし得ることから根強く言われている問題です。特にEU設立の基礎となるローマ条約における「ever closer union(限りなく連合体に近い)」という表現が取り沙汰されています。要は、EUに対する不満を「主権はEUではなく国にあるのだ」という表現で示すのです。
しかしながら、残留派の英キャメロン首相は、昨年EU改革案として発表した声明の中で、この「ever closer union」のイギリスに対する適用除外をEUに対して主張しました。EUと距離を置こうとするイギリスの姿勢は、昨年11月に発表されたみずほ総合研究所のレポート「明かされた英国の「Wish List」 無視し得ない英国のEU離脱リスク(pdf)」に示されています。

離脱派:これ以上EUが「ever closer union」となることを求めるならば、もうイギリスはそれに付き合うことはない。イギリスの主権を取り戻せ。
残留派:狭隘な「小英国主義者」はイギリスを滅ぼす。このグローバルな時代、経済的に豊かになりたければ国家は皆closerになる必要がある。キャメロン首相のEUに対するWish Listは実現するはずだ。

5. 貿易問題
離脱派:中国やインドなど新興国との交易をもっと増やすべきだ。EUからの離脱は貿易の多様化を目指すために必要だ。
残留派:EU諸国への輸出はイギリスの輸出量の44%を占める。EUからの離脱はEU諸国との間に関税障壁を生じさせることとなり、逆効果だ。

6. 金融問題
離脱派:イギリスは税金が比較的安い(法人にかかる法人税実効税率はドイツ、フランスよりも安く20%。これが今後さらに18%まで下げられる。)ので、イギリスがEUから離脱しても金融機関が逃げ出すことはない。
残留派:EU域内で金融ライセンスや決済システムが共通であり、EUに属していることこそが世界の金融センターたるロンドンの強みだ。EUから離脱すると金融機関はロンドンから逃げ出してしまう。

<離脱派と残留派の傾向>
離脱派:都市部以外の地方在住者、高齢者、労働者階級
残留派:都市部ホワイトカラー、若者、知識層・経営者

田舎の高齢者は「移民のいない静かな生活」を望み、また「大英帝国よもう一度」とシンプルに古き良きイギリスを思い描く傾向にあるようです。また、労働者階級は移民と雇用を争う最前線に立つわけですから、目先の生活が一番大事なのは当然で、自分たちのライバルである移民がこれ以上来ないようEU離脱を主張します。
これに対して、ロンドンを含む都市部の知識層は、EU離脱のデメリットをそれなりに知っていることから、安易に離脱することはできないと考えがちのようです。また、若者たち、つまりEU加盟後に生まれた世代は子供のころから移民に慣れており移民問題にそこまで抵抗がありません。

イギリスは4つの主要な国つまりイングランド、スコットランド、ウェールズそして北アイルランドが集まった連合王国であることはご存知でしょうが、その地域ごとに見てみると、BBCの各地方の集計結果「Find Local Result」にあるとおり、イングランドとウェールズは離脱派優位、対してスコットランドと北アイルランドは残留派が圧倒しました。結構きれいに分かれていますよねこれ。上記ページの地図、左側の島がアイルランドですのでその北側一部の黄色残留優勢部分が北アイルランド、イギリス本島の北側まっ黄色残留一色の地域がスコットランドです。さらに言えばイングランドの南東側、黄色い残留部分がちらほらとあるところのうちのひとつがロンドンです(選挙区が30くらいあるのでロンドンで検索してもCity of Londonいわゆる「シティ」しか出てきませんが)。
ざっくりと分析すれば、北アイルランドは「EUを離脱するとEU加盟国である隣のアイルランドとの関係が疎遠になってしまう」という理由で、そしてスコットランドは「EUに属したまま、つまり関税がないままで北海油田の利権を享受したい」という理由で、ともに残留支持でした。特にスコットランドの「北海油田」という理由は特別なもので、これもご存知スコットランド独立運動の機運があり、先の2014年に行われた住民投票で「賛成45%、反対55%」というこれも結構ぎりぎりで独立が否決されたことは記憶に新しいところです。北海油田はスコットランドが独立すればスコットランドがその利権の一部を単独でものにすることができる位置にあります。しかしながら、現在北海油田の利益はイギリス政府に全て握られているのです。スコットランドの独立運動の主要な理由のひとつとして挙げられるところであり、今回のイギリスEU離脱の結果を受けて、早速スコットランド政府は「再度独立の住民投票を」という声明を出しています。つまり独立した上で北海油田の権益の一部を確保してEUに留まりたいということです。このスコットランド情勢も今後注目していかなければならないところですね。

以上、かいつまんでの説明なので雑なところもありますが、イギリスのEU離脱の背景でした。
ちょっと投稿文字数が何とかという警告が出ておりまして、まさかまさかの前後編、後編は「イギリスのEU離脱が日本に与える影響」を中心に検討していきます。

(後編に続く)


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