BlackAsh News!! 新着順 - 5月 11〜 - |
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2004年 5月 20日
(木)
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◆ UFJ、信託銀を売却へ…住友信託に3千億円で
(読売新聞)
[12:36] | | 『2004年3月期決算が大幅赤字となる見通しのUFJホールディングス(HD)が、傘下のUFJ信託銀行を住友信託銀行に約3000億円で売却することで基本合意した・・・ 住友信託は9月末までにUFJ信託株を買収、子会社にした後、経営統合して信託銀行では国内最大の「住友・UFJ信託銀行」(仮称)を発足させる』 ありゃりゃ。いろいろと話はあったけど、UFJグループの切り売り開始という理解でいいのかな。竹中金融相に追い詰められ、中央青山監査法人に止めを刺されて赤字3000億円、経営陣は総入れ替えという憂き目に遭ったUFJですが、その赤字をまるまるカバーするUFJ信託3000億円也の売却劇。これ元手にUFJは、あとタイムリミット1年間で不良債権を何と2兆円分、死に物狂いで処理してくるでしょうけれど、果たして政府目標を達成できるのか。達成できたとしても、その後苛烈な競争のただ中で生き残るだけの体力があるのか。信託業法の改正が見えていて、これから信託もなかなか使い勝手がよくなり注目されているところだけに、この売却は苦渋の決断だったでしょう。
こうして切り売りのような形をやむなくされたUFJ。当たり前ですが、残った本体が小さくなればなるほど、他人に買収されやすくなるわけで。竹中金融相に外資銀行への志向性があるとするならば、UFJグループはかなり厳しい舵取りを迫られます。思惑通りか、はたまたUFJが猫をかむのか、当然のように内定者と従業員のことはスルーされながら、おそらくはそれほど長くならないであろう戦いが、佳境に入ります。
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2004年 5月 19日
(水)
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◆ ウィニー開発の金子容疑者が全面否認「幇助の覚えはない」
(朝日新聞)
[12:32] | | 『ファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」を使った著作権法違反事件で、同ソフトを開発したとして同法違反の幇助(ほうじょ)容疑で逮捕された東大大学院助手金子勇容疑者(33)の勾留(こうりゅう)理由開示法廷が18日、京都簡裁であった』 さあ、Winny開発者が気合のこもった戦いを始めました。勾留理由開示ってのは、逮捕後起訴前に、逮捕の理由を裁判官が法廷で明らかにすることで理由のない逮捕ではないことを知らしめ、被疑者を不当に拘束させないようにする手続です。聞くところによると、勾留理由開示は、弁護側が強烈な否認をする場合その戦いの意思を表明する儀式らしく。ええ、そうです。儀式です。弁護側が意気込んで勾留理由開示で意見を述べたって、裁判官はほとんど全てのケースで捜査機関側の勾留継続を認めるようです。いくら不当だ違法だと騒いでも、裁判官はほとんどを無視します。釈放した場合の証拠隠滅の可能性は全てのケースでゼロとは言えず、逃亡の危険性についても同じ。そして、まだ捜査段階ですので、そもそもが裁判官にとって判断資料が足りないわけで。だったらそのまま逮捕させておくのが一番安全で手堅いってなもんですよ。本件でも全くもってその通りになりました。 『神田大助裁判官は勾留理由について「ウィニー開発の全容が解明されたとは言い難く、パソコンなどを押収したとしてもなお証拠隠滅の恐れがある」と述べた』 つまりはそういうことです。裁判官のところに来る資料が足りないから、まだ他に証拠があると思うのが自然。これはこれから捜査機関がまとめるんだから当たり前。捜査側の怠慢といわれればそれまでなのでしょうが、これが現実。資料が少なすぎて、結局ここで勾留に理由なしってことはほとんどないっつーかそうなったらそれは捜査機関がいい加減な捜査をしてたということになるのが実情だそうです。この裁判官は、そういう状況下で手持ちの資料から普通に判断をしただけのこと。
ところで、Winny開発者の言ですが、この勾留理由開示で出た「著作権法違反幇助の故意はなかった」というのが初めての手続上での主張です。 『弁護側がこの日提出した上申書で金子容疑者は「ウィニーを開発したのはファイル交換システムを改善する技術を検証するためであり、著作権侵害をさせるためではない」と釈明し、「勾留の目的は自白の強要であることは明らか」と捜査機関を批判した』 まあ後ろの部分の弁護側のセレモニー的捜査機関批判は置いておいて(弁護士先生はだいたいこういう風に書きます)、ファイル交換を助長する目的ではなかった、という主張をこれから維持できるかどうか、ここがキーポイントです。もちろん捜査機関は事前捜査でネット上の発言をかなり記録しているでしょうし、IPアドレスだけがネット上の発言を本人の発言として一致させる証拠ではないため(証明は100%である必要はないのです。だいたい8割がた真実と判断できればそれでOKっぽい。今回なんかは周囲の状況から判断してソフト開発者しかすることができない発言であれば合理的に発言者を特定できるでしょう)、かなりシビアな戦いが予想されます。以前私は刑法の教科書から講学上でいう事実の錯誤を使ってこのケースでは有罪の可能性があると書きましたが、その論法を使わなくても、幇助犯が正犯の犯罪行為をどの程度認識していればよいか、つまり幇助犯は具体的に正犯という人物も犯罪行為の内容も日時も認識していなければならないか、それともある犯罪の具体的な危険があることを認識していれば足り、それ以上に具体的な正犯という人や犯罪行為の詳細等まで知る必要がないか、という問題の結論で判断できます。そして、裁判所はおそらくは後者でしょう。加えて、故意が認められるためには違法行為への積極的な意思だけではなく違法行為を認識した上でそれを許す意識状態でも認められます。だから、ここで否認するためには、最初は言っていたといわれる「著作権法違反の蔓延」発言とは真逆の発言をする必要があるのです。
『法廷には大勢の支援者らが駆けつけた。弁護団によると、金子容疑者には同日まで705件の寄付金計約635万円が寄せられているという』 これはかなりの人数が2ちゃんねらーのようです。弁護団はネットで寄付を募り、その他にも大勢の方々がWinny開発者を支援する活動を行っているようです。これからどうなるかわかりませんが、ここまで広がるということはそれだけこの事件が注目を集めていること。私も、非常に気になっているのです。
最後にひとつ。 法律というものは、おそらく、「論理が先にありき」ではなく、「結論が先にありき」というものだと思います。つまり、論理に従って結論を導くのではなく、まず先に結論の当不当をその時の常識に従って判断し、その評価によって論理を変えていく学問であり、そうするのが実際の運用であると思います。それは、しばしば「論理的ではない」という批判にさらされますが、法律が純粋な学問にとどまらず実際に社会で使われるツールである以上やむを得ません。そして、これが意味するところは、結局、ある行為が社会的にまずいと思われるのであれば、その評価に従って法律の論理を構成し、その行為の責任を問うことができる、ということに他ならないのです。
今回は、Winny開発者の主観客観を併せた行為全てが、社会的にどのように評価されるのでしょうか。私は、ネット上に散らばる意見から離れた一般的な判断からして、「それはいけないことだよね」と判断される可能性がやや高いように感じられてたまらないのです…
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2004年 5月 17日
(月)
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◆ 民主・小沢氏も年金未加入 代表選への立候補辞退
(朝日新聞)
[21:28] | | 『民主党の小沢一郎代表代行は17日夜、党本部で記者会見し、国民年金に国会議員が任意加入だった80年4月から86年3月まで未加入だったことを明らかにし、「政治的けじめをつける必要がある」として、菅直人代表の後任を選ぶ18日の代表選に立候補しない考えを表明した』 なあ、みんなこれからバラエティ番組見るより国会中継を見ようぜ。こんな面白い番組って、今テレビ局で幅を利かせているディレクターの力じゃなかなか作られないぞ。年金未払問題はもう最後だって言ったけど… 余りのグダグダ、ここまであきれたのは初めてだよほんと。小泉が本当に強運なのか、小沢が発表時期をずらしてうまく逃げたのか、虚々実々が入り混じる国会中継はきっと今熱い!
で、民主党は身内のグダグダで支持も得られないという結果に終わったわけだが… って今度こそ終わりだよな? まだ何かあるのかな?
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◆ セブンイレブン、米国で「おにぎり」発売へ
(CNN)
[13:51] | | 『コンビニ最大手、セブンイレブンのジェームズ・キーズ会長兼CEO(最高経営責任者)はこのほど、米国内の店舗で近い将来、おにぎりを売り出すとの方針を発表した。日本のコンビニで不動の人気商品とされるおにぎりが、果たして米国でもヒットするかどうか、日本人にとっても気になるところだ』 日本人の魂とも言えるおにぎり。私は焼きたての鮭おにぎり(異様にしょっぱいか、または脂満載のやつ)が大好きです。海苔はしんなり派です。最近の流行の「少し高いけど高級なおにぎり」の普及がとてもうれしいです。
そんなおにぎり大好きな私ですが、おにぎりがアメリカで受けるかと訊かれたら、ちょっとうつむいてしまう。だって、私は外資にいるんだけどさ、アメリカ人がコンビニでおにぎり買ってきて食ってるのほとんど見たことないよ。だいたいがサンドイッチだよ。何かね、やっぱりアメリカ人は海モノがどうも苦手っぽい。つまり海苔がダメっぽい。においが好きじゃないらしい。あの寿司の海苔巻きも、アメリカで何だか分けわからんモノを入れられてあまつさえ表裏ひっくり返ったりしてるじゃないですか。つまりね、カリフォルニア巻きは、あれは寿司の概念を超越したよ。おにぎりも、これと一緒で、いつの間にかものすごい加工をされそうな気がする。 『ロイター通信は、おにぎりについて「米国のサンドイッチに匹敵する人気商品。ハンバーガーより小さめで、のりに包んだ米飯の中に焼き鮭や梅干し、たらこなどが入っている」と説明した。さらにめんたいこやおかか、昆布などの具も紹介しているが、「米国人の口には合わないだろう」と指摘。代わりに、焼き豚や「ケージャン・ビーンズ(米南部風のスパイスで味付けした豆料理)」のおにぎりを候補に挙げている』 最後のあたりがもう既に心配だねぇ。確かにケイジャン・ビーンズにご飯を突っ込んで食べる雑炊みたいな料理もあるのは知ってるけど、それをおにぎりに持ってこようというのが。きっとすごいおにぎりができると思うよ。まあ肉やスパムはもうあるし、アボガドは多分候補に挙がるだろうな。ヘルシーとかいって生野菜をはさんだり外に巻き付けたりしそうだな。あと向こうの傾向に従えば間違いなく米と具の比率が1:1のイコールに近くなるね。味付けも塩では物足りないだろう。かといって赤飯や炊き込みご飯は彼らにとって日常ではなくどうも微妙と思われる。そこでバターライスやジャスミンライスの出番ですよ。何でも味がついていないと納得いかないお国柄だからね。
きっとアメリカで、全く発想の違った新しいおにぎりが生まれることでしょう。怖いもの見たさだけど一度は食べてみたいものです。セブンイレブンは逆輸入しないかな。きっと、一口食べて苦笑しながら日本人であることの再確認を行ったり、アメリカ人の超越っぷりに舌を巻いたり、はたまたアメリカ人もなかなかやるななどとつぶやいたり。おにぎりがとんでもないことになるのはちょっとがっくりかもしれないけど、一方でそんな楽しみ方ができるかな、と今から期待していたりするのです。
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2004年 5月 16日
(日)
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◆ 電車男(2ch独身男性板より)
[07:09] | | ある日、電車で男が暴れていた。無礼極まる暴言と態度。それはついにある若い女性への暴力へと及び… その時、ありったけの勇気を振り絞って、一人の秋葉ヲタが立ち上がった。
そして、物語は進んでいく。
きっと、みんな幸せになれる。そう確信した、2chでの出来事。まずは、標題リンク先へ飛び、フラッシュをご覧ください。そして、独身男性板最大級と思われる絨毯爆撃を、みんなで浴びましょう。最後に電車男さん、すばらしいお話をありがとう。
上のお話とともに他のお話もまとめたサイトはこちら「毒男が後ろから撃たれるスレ 衛生兵を呼べ」です。2chスレにもリンクが張ってありますが、まずは書き込みは控えて、じっくり読んでみましょうね。
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2004年 5月 15日
(土)
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◆ 菅代表の国民年金脱退手続き、社保事務所が取り消す
(朝日新聞)
[05:22] | | 『民主党の菅代表は14日の記者会見で、代表の辞任表明のきっかけとなった国民年金の未加入問題に関して、地元の武蔵野社会保険事務所が、菅氏側が当時行った国民年金の脱退手続きを取り消したことを明らかにした。菅氏は「未加入としたのは行政側の誤りだった」との認識を改めて示すとともに、「混乱を招いたという辞任の理由は全く変わらない」と述べた』 もうこの議員年金未納のニュースは書きたくないんだけどもさ、余りにも、余りにも菅代表が不幸なもんで、つい。ここまで笑いと哀愁に包まれた人はなかなかいないのではなかろうか。だってさ、一人で騒ぎを大きくして、反作用的に自分の未納で責められて自爆、辞任のニュースもWinnyでかき消され、止めは後任の小沢代表決定の日に社会保険庁の「間違ってました」だよ? 人生波乱万丈を地で行ってるわけだよ。小泉には北朝鮮にトンズラされ、福田の追及はうやむやになり、みんな自分の納付状況を顧みて恐怖して年金法案以外でもろくに論戦展開という流れにならず、肝心の年金法案は3党合意がもめそうでまた紛糾の予感、朝日新聞は左っぷりを発揮して小泉の40年前の浪人予備校生の時の未納を指摘する重箱の隅つつき的な駄報道を垂れ流し、菅代表は未納分追納の方針とか言ってるけど時効の壁でできないっぽい。何にも、何一つとしていいことがない。くだらん。
もうね、このあたりでほんともういいでしょ、この年金未納報道は。正直、みんなうんざりしてない? 説明責任とかほんと今回はどうでもいい。どうせみんな納めてない。そんな程度の現行制度だっていうことがよくわかったから。だから、頼むから年金法案をもう一度しっかりと練り直してくれ。このグダグダを招いた元凶である腐りきった年金制度をどうにかしてくれ。今後「年金未納が年金法案を語るな」とか一言でも言った議員は、討論すべき事項外のことを吐いて時間を浪費させた廉で即刻首にするくらいの覚悟でやってくれ。
ダメなんだろうなぁ、何を言っても。
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2004年 5月 14日
(金)
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◆ 小泉首相にも年金未加入期間 義務付け前の6年11カ月
(産経新聞)
[18:47] | | 『小泉純一郎首相(自民党総裁)に国民年金保険料の未加入期間があったことが14日明らかになった。飯島勲秘書官が記者会見し、衆院議員当選後の1980年4月から86年3月までの6年間と当選前に計11カ月の未加入期間があったことを公表、「当時、国会議員は(義務付け前の)任意加入で法律上問題はない」と説明した』 あっはっはもうどうにでもなれ。小泉まで自爆かよ。これで福田元官房長官の辞任劇が無駄になりそうな予感。強制加入前の未加入期間ということで、別に法律的にはどうってことはないわけだけど、衆院当選前も未納はないっていってたから、虚偽説明の責任だけが問われる形となりそうだな。「未納はない」って言っただけで「未加入はない」とは言ってないとかどうでもいい論戦になるのかな。これでまたぞろキィキィうるさくなるなぁ。まあ、今となっては主だった代表レベルの議員が軒並み討ち死にだから(志位と小沢くらいだったか、完納してるのは)、どこの党だって大きな顔なぞしてられないのだけれど。もう国会議員全員納めてないって言っても驚かないよ。うんざりだ。そして小泉首相お得意の「外交での点数稼ぎ」が始まると。
いやね、ほんとにさ、個々人の未納とかどうでもいいから、法案についてしっかりやりあってくれよ。あんたらの納付状況に興味はない。興味があるのは私ら庶民への影響だけなんだからさ。
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2004年 5月 13日
(木)
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◇ 気になるスレ : 2ch 【Winny】一斉逮捕のガイドライン【幇助】
[04:35] | | ガイドラインより、早速京都府警がコピペに使われたスレ。
ネットを震撼させたWinny作者の逮捕を報じた記事を少し改変した書き込みが>>1に。そして、ガイドラインで行われることと言えばひとつ。その記事をいかに上手く改変していくか、という。つまるところ何が何でも皆様は逮捕。嗚呼、京都府警恐るべし…
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2004年 5月 11日
(火)
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◆ 「故意」の立証が争点に Winny開発者逮捕
(朝日新聞)
[03:12] | | 下の記事でも述べましたWinny開発者逮捕劇。菅代表辞任のニュースがすっかり飲まれてしまい、どこまでも菅代表は不幸だなと思うことしきりなのですが、それはひとまず置いておいて、この京都府警の逮捕が果たして正当なものであるかどうか、ちょっと考えてみることにします。ああ、いつぞやの小泉靖国参拝判決の時の憲法から、今度は刑法か。ホコリかぶってるどころじゃないぞ。きっと版が古いぞこの本。まあ、刑法の62条幇助犯の規定は改正されていませんので大丈夫ですけども。
著作権法違反の罪は、刑法に規定されている共犯規定の適用を受け、複数で違反した場合も当然に違反の対象となります。そこで今回問題となっている「幇助犯」についての刑法の規定を見てみますと、刑法62条1項には、「正犯を幇助した者は、従犯とする。」と書いてあります。ここで言う「従犯」がつまり幇助犯のことで、結局、今回の問題は、Winny開発者が「正犯」である違法アップロードをした人を「幇助した」と言えるかどうかが問題となります。
で、「幇助した」とはいったい何ぞや、というところになりますが。 結論から書きますと、行為に関する客観的な要件として「有形無形の方法により正犯の犯罪行為を容易にする行為があること」、意思に関する主観的な要件として「正犯の犯罪行為を認識しつつ、自分の行為が正犯の実行を容易にするものであることを認識・認容すること」という2つがセットになっていることが必要です。 一見してお分かりになるでしょうが、何か漠然としていてえらい勢いで広い範囲に及ぶなあ、と。ネット上の意見の大勢として、どうやら今回の逮捕は不当逮捕であるという主張がつとに見られます。そんなただのソフトの開発行為が何で幇助に当たるのか、と(まあただの開発行為だったら該当しないんですが。ここがキモです)。しかし、上の定義に、今回の逮捕劇に際して出てきた情報を当てはめると、これまた見事に「別に普通に有罪の可能性があるんですけども」という結論になってしまうのですからこりゃまた怖いものでして。それでは、以下説明していきましょう。
まず、客観的な面。 「有形無形の方法により」というのは、つまるところ何でもあり、バーリ・トゥードだということです。人を刺そうかどうか迷ってる人に包丁を貸しても、「やっちまえ」という台詞を吐いても、それに勇気付けられたその人が本当に刺せば、傷害罪の幇助犯となります。で、「正犯の犯罪行為を容易にする」という意味は、単に犯罪行為への助けとなるだけで足り、必ずしも必要不可欠な程度までいかなくてもいい、というのが一般的。 今回のWinny開発行為及びそれをネット上で不特定多数に配布可能な状態に置いた行為は、その客観面だけに着目してみれば(=開発の時の意図を無視して考えれば)、明らかに、著作権違反の行為(=ファイルの無許可アップロード)を容易にし、それを助ける行為です。よって、幇助反省率のための客観的要件は問題なくアウトとなります。
次に、主観的な面。ここが、標題リンク記事でも一番の問題とされているところなのです。果たして、Winny開発者に、「正犯の犯罪行為を認識しつつ、自分の行為が正犯の実行を容易にするものであることを認識・認容すること」があったかどうか。この要件の意味は、文字通りに解釈してもらって大丈夫ですよ。 ここで、今回のWinny作者47氏に関する特殊な事情を考慮しなければなりません。彼は、もういろいろなところでニュースとして上げられていますが、いくつかの発言をしているとされているのです。いわく、
『現行のデジタルコンテンツのビジネススタイルに疑問を感じていた。警察に著作権法違反を取り締まらせて現体制を維持させているのはおかしい。体制を崩壊させるには、著作権侵害を蔓延(まんえん)させるしかない』
またいわく、
『そろそろ匿名性を実現できるファイル共有ソフトが出てきて現在の著作権に関する概念を変えざるを得なくなるはず」「自分でその流れを後押ししてみようってところでしょうか』
などという発言です。 仮にこれらが本人の発言としてきちんと警察や検察の供述調書に取られているならば、これは、主観的な面として、はっきりと、正犯(=ファイルの無許可アップロードをする人)の犯罪行為(=ファイルの無許可アップロード)を認識しつつ、自分の行為が正犯の実行を容易にするものであることを認識し、かつ認容していたということを証明するかなり強い証拠となります。言っていることは、「著作権侵害を後押しすることを意図して開発した」とほぼ同義ですから。私は、これらの発言により、主観的要件も満たす可能性が十分にあると思います。つまり、有罪の可能性があると。
ここで私が強調したいのは、これらの発言さえなければ、主観的要件を立証するのは困難になっただろうな、ということ。開発意図について当初から沈黙し、事情聴取の際に「違法アップロードを助長するつもりなんかなかった」などと貫くことが出来れば、逮捕までには至らなかったと思います。まあ警察もプロですから、ここらへんをものすごくきっちり固めることは間違いなく、あの手この手で吐かせようとしてくるわけですが、それにしても…
加えて言うならば、私は、今回の逮捕が正しいとは思っていません。もちろん法律的に言えば可能だと思います。ただ、法律的に可能だからといって権力がぐいぐいと力技で持っていくのは、これは本当におかしい社会になってしまいます。下の記事でも書いたように、これは禁じ手、見せしめに等しいかと。ここは、確かに今ある法律でもできることはできるけれども、やはり明確な法律の改正を待つべきではなかったか、と思うのです。
以上に対して、開発者は具体的に今回正犯とされた人が犯罪を犯すなんて分かっていなかったから主観的要件を満たさないだろう、という反論があるかと思います。標題リンク先記事の園田教授も、その点を捉えてコメントしています。 『園田寿・甲南大大学院教授(刑法、情報法)は「今後、争点になるのは、開発者の故意の有無だろう」とみる。開発者がメールなどで利用者と連絡を取っていた場合、幇助容疑も成立するが、単に開発しただけなら違法行為の「あおり」にしかならないと指摘。「共犯が成立するためには具体的に犯罪が発生するという結果について予見していることが必要だ。でないと、パソコンメーカーやインターネット接続業者、Winnyのマニュアル本を出している出版社までも共犯に問われることになってしまう」と話した』 ということです。もちろん、権威ある教授ですから言っていることは正しいです。ええ、正しいです。開発者がメールで個別具体的な正犯に連絡を取っていれば当たり前に幇助犯成立、対して単に開発しただけなら幇助犯不成立。正しいです。しかし、今回は、二つの例の間なのです。今回は、ただ単に開発していない。上の発言が正しいならば、著作権侵害を助長する意図を持って開発したのです。しかし、具体的にどこの誰が犯罪を犯すことまではわかっていなかったのです。こういう場合どうするか。
詳しく話すとえらい専門的になり本から書き写すのがだるくなりますのでかなり割愛しますが、基本的に「同じ犯罪の範囲内であれば、多少の事実の錯誤は問題とならない」という立場で裁判所は動いています。例えば、物体Aを壊そうとして間違って物体Bを壊してしまった場合、一般的に物体Bへの器物損壊罪が成立します。このことについてはみなさんも問題なく受け入れられることでしょう。およそモノを壊すことは意図しているのだから、どれを壊したかはさほど問題ではなく、そういう態度は責められるべき、と。しかし、ここで、具体的にどこの誰がどのような犯罪をどのような方法で犯すか、全て一致していなければ犯罪は成立しない、という解釈を取ると、物体Aについて器物損壊罪未遂、物体Bについて過失器物損壊が問題となりますが、現在の刑法では器物損壊の未遂も過失器物損壊も犯罪となりません。これでは不都合です。そこで、上に述べたとおり、「同じ犯罪の範囲内であれば、多少の事実の錯誤は問題とならない」ということにしたのです。
今回の著作権法違反に関してもこれの応用が利くでしょう。つまり、誰が犯すかまでは具体的に覚知できないけれど、予想できる犯罪はファイル無許可アップロード。対して成立する犯罪は同じファイル無許可アップロード。そうであるならば、そのような犯罪が成立する可能性があると分かっていながら、敢えて著作権侵害の意図を持ってソフト開発行為に及んだ人は責められるべき、という判断が出来ますっつーか裁判所ではそうするんじゃないかと思います。というわけで、上の反論は成立しないでしょう。やっぱり、有罪の可能性あり。
結局ですね、開発者の人の上のような発言が警察に取られているかどうか、ですよ。ネット上で発言したから本人かどうかわからない、なんて問題にならない。警察や検察の前で「開発時に、著作権法違反を助長する意図を持って開発していました」という発言をすれば、それは間違いなく本人の発言です。ここが、本当にキモなのです。
本日流れたニュースは、警察大本営の発表でしょう。ですから、全てが正しいとは限らない。真実は、まさに本人しか知らない。本当はどうなのか。警察や検察はどう動いてくるか。起訴か不起訴か。有罪か無罪か。音楽配信メモのリンク集やWikiのまとめなどを参照して、これから、このニュースは大いに注目して見守っていくことにします。
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