| 私にとっての「横綱」とは即ち千代の富士のことだ。見惚れるような土俵入り、小柄な身体から繰り出す強烈な上手投げ、大乃国を吊り上げ、膝を壊す前の全盛期小錦に対して真正面からぶつかっていくその力強さに息を呑んだ。土俵際で吊り出そうとして相手の力士、ほら例えば隆の里が、外掛けで必死に耐えるシーンは見ているだけで力が入った。まさに相撲の美しさを、横綱の矜持を見せてくれた。忘れもしない、初日貴乃花、ああまだ貴花田だったか、その突進を真正面から受けて完全に力負けして、涙を浮かべながら引退したシーンは、今でも私はなかなか見返すことができない。
豊かな大銀杏、若いころの青いまわしも、横綱時代の黒も、誰よりも格好良かった。あのサイドスローっぽい塩の撒き方が好きだった。取組前の相手との戦跡表示で「寄り切り」が並びまくる画面にニヤニヤしていた。
早い。早過ぎる。あなたは最高の横綱だった。
R.I.P.
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