| WBCフライ級タイトルマッチ11回戦 WBCプロレスリングフライ級タイトルマッチ1R3分1本勝負 Black採点 ボクシング11回戦 内藤: * * * * * * 9 * 9 9 *|107 亀田: 9 9 9 9 9 9 * 9 9 * 9|101 (9R、内藤・後頭部への加撃で減点1)
プロレス1R3分1本勝負 内藤: * |117 亀田: 6 |107 (12R、亀田・無双失敗等で減点3)
『亀田大毅の未熟さばかりが目立った。最終回、採点公開制によって四、八回に発表された途中経過で大差がついた亀田大は、内藤を持ち上げて投げ飛ばした。もはやボクシングではない。通算11戦目の18歳は観客さえ敵に回してしまう、精神的な幼さが出てしまった』
腱鞘炎が更に重篤になって激痛で動かない左人差指をおしてでも、この試合について記しておこう。ご覧になった方は十分に認識しているだろうが、亀田大毅選手が世界を口にすることがいかにおこがましいことか、それがこれ以上ない形で証明された一戦だった
まずは、ボクシングパートから語ろう。 内藤選手は決して調子がよかったわけではない。ポンサクレックとの12R激闘の前戦から3ヶ月という強行日程、おそらくは調整失敗と緊張が相俟って身体が硬く、心理的にも気負い過ぎてともすれば空回り、相手のサイドへ動きざまに攻撃という自らのボクシングの生命線を投げ捨てた打ち合いを敢えて選択するなど、一言で言えば「雑なボクシング」をやらかしてしまったと言っていい。残念ながら、内藤選手のパフォーマンスは、あのポンサクレックを倒した時のレベルにははるかに及ばなかった。ここは内藤選手は猛省するところであろう。私たちは、内藤選手にチャンピオンとしてもっと素晴らしいパフォーマンスを期待しているのだ。今後は厳しい戦いとなるだろうが、プロとしてきっちり仕上げて戦って欲しい。 しかし、それ以上に、亀田大毅選手は世界戦のリングに上がる資格はなかった。ガードを上げて頭から突っ込んで手打ちの左フック。それだけしか攻撃の引き出しがなかった。しかもその左フックは、内藤選手をして
『15歳年下の挑戦者の実力を、内藤は序盤で見切った。「左フックを警戒していたが、あまり上手じゃないし、強くない。これなら打ち合っても大丈夫」。立ち上がりから亀田大毅の突進をサイドステップでかわしながら右フック、左ボディーフックを当てていたが、四回からは正面に立った』(毎日新聞)
と言わしめるほど、喧伝するパワーに欠けていた。TBSの実況はさかんに亀田大毅選手のパワーや一発の威力を強調して解説していたが、その目は節穴であるのは明らかだ。あの程度の広背筋と僧坊筋、そして何より足腰が連動していないあのオープンブローでは、パワーあるパンチなど打てるはずがない。ましてや、パンチを出す時が見え見えで、しかもリズムも一定で、同じ角度から同じ速度で振り回すだけ。これが扇風機以外の何の役に立つのだろうか。今は秋。猛暑の夏ならともかく、扇風機など必要ない。 加えて、今まで散々亀田戦の論評で私が言ってきたことだが、膝や腰が致命的なまでに硬く、どうにもディフェンスの技術がない。ただガードを上げるしか能がなく、ウィービングもダッキングもスリッピングもスウェーも… ああ、もういい加減指が痛いので、以前の亀田大毅選手の試合の論評のリンクを貼る。つまりはこのころと何にも変わっていないのだ。内藤選手がハードパンチャーではなく、また打ち合いに応じてくれたことに救われて最後まで立っていることができただけのこと。要は、一言で言えば「ボクシングが下手」なのだ。
次に、今回WBCが特別に用意したらしい、12ラウンド目のプロレスリング1R3分1本勝負について。WBCもなかなか趣向を凝らすものだ。まさかボクシンググローブをつけたままプロレスをやらせるとは。 ボクシングパートで絶望的なまでに差を広げられた亀田大毅選手は、このラウンドも序盤はナックルで打ち合うも、自らの攻撃は全く当たらず、逆に内藤選手の的確なフックの連打を受け、ついにナックルによる攻撃を捨て、グラウンドでの勝負に打って出た。打撃では敵わないという判断は、亀田大毅選手にしては珍しく正しかったと言えるだろう。しかし、一か八かの大勝負に、ここでも下半身の硬さが裏目に出た。足腰をきちんと使わなければ投げは決まらない。まずはタックルでテイクダウンを奪おうとするも、下半身がついていかずにつんのめり、もつれるようにロープ際に倒すことしかできず、そこからの攻撃の手段がない。結局内藤選手の目の傷口への凶器攻撃(サミング)しかできず、レフェリーにあっさり見つかって減点を食らう。業を煮やしたか、亀田大毅選手はブレイク後にいきなり内藤選手の懐に入り込み、股下をクラッチして内藤選手を持ち上げ、力皇のフィニッシュ・ホールドでもある大技の無双を狙う。しかし、あれだけ誇り自慢していたパワーはたった50kgの内藤選手を肩口まで持ち上げることすらできず、無様に腰砕け、内藤選手を中途半端にうつぶせに投げ捨てることしかできない。これには会場もブーイングの嵐、呆れたレフェリーにフィニッシュ・ホールドの失敗で減点を食らう。これで完全に腰が引けたか、体を入れ替えてのすくい投げもキレがなくやはりロープ際でもつれる。体格に劣るはずの内藤選手に逆に押し倒され、ヘッドロックで辛うじて窮地を脱出した後は、迫りに迫る内藤選手のナックル攻撃に為す術がない。最後の最後に逆転で柔道技の朽木倒しを狙うも、内藤選手の脚に抱きついてずるずる引きずられてゴングという無残な結果に終わった。
ゴングの直後、内藤選手が必勝とばかりにリングを駆け回り観客を煽る中、いつもの過剰なアピールはどこへやら、悄然と佇む亀田大毅選手は、まさしく場違いの世界戦のリングに立ってしまい途方に暮れている等身大の18歳の少年であった。亀田家の無敗街道に土を付けてしまった亀田大毅選手、今日の試合を見る限りボクシングの才能もプロレスの才能もともになく、これからどうやって糊口を凌いでいけばよいのか、産経新聞、毎日新聞には手酷く書かれ、スポーツ新聞各紙にもいずれもトップで待ってましたとばかりに書かれ、優しかったサンスポにもフォローはあるもやはり手厳しく、もっと優しかった日刊スポーツはどうしようもなく自社コメントすら載せず、フジめざまし大塚コメントでは舌鋒鋭くこき下ろされ、頼みのTBS朝ズバみのコメントも戦前よりやや論調が変わり、これではコメンテータとしての仕事もないだろう。まあ自業自得といえばそれまでだが、こうなったのは彼一人のみの責任かといえばそうではないのは明らかである。所詮他人事であるし、するのはタダなのであるから、ここでひとつ、次に控える長男の凋落を期して力を貯める意味でも、少しばかりの同情くらいはしてあげても悪くはないのではないか。少しばかり意地が悪くなるような、そんな結末であった
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