| そのまんま東が再チャレンジ成功例であると放言した安倍首相肝煎りの政策… なんでしょうか? 公務員の中途採用が来年から行われるとのことです。確かに公務員中途採用制度があれば、公務員試験の大きな壁「年齢」から解放される受験生としては願ったり叶ったり、この試験に合格して面接を切り抜けめでたく採用となれば、フリーターという余りに不安定な身分から、普通に過ごしていれば失職とはほぼ無縁で各種保障もきっちり揃った安定した身分に移行でき、加えて記事中にあるように「年齢給を上乗せ」してくれるのであれば新卒と同額という憂き目にも遭わないバラ色のような制度です。雇う側である国としても、たとえ合格者に年齢給を上乗せしたとしても、これもやはり記事中にあるように「新卒の試験での合格者を減らす」のであれば、採用開始の年齢が高い分定年までに当該職員に支払う給与総額は少なくなるので、人件費の節約も出来るということになり、これも公務員人件費削減の流れに合致する、なかなかいい制度ということになりましょうか。うーむ、これは肝心の試験制度が気になるところですが…
『政府は、「フリーター」らに対する「再チャレンジ支援総合プラン」の一環として、2007年度の国家公務員採用試験から中途採用枠を新設する。17〜21歳未満が受験資格の国家公務員3種試験(高卒程度、06年度は1274人採用)と同レベルの試験を今年9月、29〜39歳以下を対象に実施し、計100人程度を採用する』 ひょー、3種相当を全国でたった100人ですかいな。いわゆる就職氷河期を大卒の氷河期とするとだいたい28歳〜39歳あたりになりますからそれなりに合致してはいますが、日本の29歳〜39歳の人口はだいたい2000万人弱、そのうちのフリーターの割合は該当年齢の範囲での統計に接することが出来なかったので、15歳〜34歳のフリーターの割合を参考までに上げると6%ちょいだそうで、まあ世代的に氷河期という要因が共通し、他にこの数字から急激に増減するような要因はなさそうですので仮に6%とすると、2000万人×0.06=120万人が29歳〜39歳のフリーター人口となります。120万人のうちどのくらいこの試験を受けるかはわかりませんが、とりあえず1%の12,000人がこの試験を受けるとしても、倍率は120倍、合格率は0.8%の超々狭き門、救済というには余りに余りな死屍累々っぷりです。ちなみにロースクール制度が出来る前の旧司法試験の合格率はだいたい3%〜5%ですから、この試験がいかに過酷なものかということは容易にうかがい知ることが出来ます。
しかも、受験資格は、 『政府は、この時期に就職活動をした現在の30歳代には、定職に就けなかったため、自分の意思に反してフリーターとなった人が多いと分析。フリーターに限定した国家公務員の中途採用の具体策を検討してきた。しかし、フリーターの定義があいまいで、制度として特定するのは困難なため、受験資格をフリーターに限定することは断念し、受験資格の年齢を絞って新たな中途採用枠を設けることにした』 というわけで、我々がフリーターと聞いて一般に想像する「バイト生活者」限定ということではなく、単純に年齢制限のみで職歴問わずということになりそうですから、フリーターに加えて、当然のことながら上位大学を卒業した司法試験・ロースクール・公認会計士・医学部再受験等資格系浪人組、修士号博士号を取ったいわゆるポスドク等高学歴で勉強好きだったり地頭がある人々も受けられますし、派遣・契約社員を含め民間に就職したものの不遇に甘んじているところからの転職組も参入可能でしょう。私は公務員試験はどれも受けたことがないので試験の詳細についてはわかりませんが、私個人の考えとしては、ペーパーベースの相対試験であれば、それがどんな試験であっても、(i)その試験に特別に対応した試験技術習得的な勉強を反復継続して相対的に他人より上回る程度にこなすという機械的な習熟の度合、及び(ii)その勉強を相対的に他人より上回る程度に行うために使うことのできる費用の多寡、という2つの要素の複合で合格不合格が決まると考えています。検索をしてみると3種の試験内容は難易度的には高いとは言えないということらしいですから、高学歴即ち試験技術習得に優れ試験慣れしている人たちや法律行政系の素養が今までの累積で十二分にある人たちは、例えば裁事の問題は極めて容易に取って来るでしょうし、実家にパラサイトで浪人している人たちであればなおさら、生活費を稼ぐためのバイトで忙しく勉強の時間が取りにくいであろうフリーターの人たちよりも容易に、習熟度とコツがものをいう教養のパズル問題でもかなりの高得点を取ってしまいそうな気がします。加えて、試験に合格した後は各官庁の面接を受けてそれをクリアしての採用となるようですが、フリーターを面接で優遇する、つまり職歴のある人を不利に扱うという基準はなさそうであるということを前提とすれば、面接では社会人経験のある方が有利であるという一般的な経験則を当てはめて民間からの転職組が強く、ますますフリーターのパイが少なくなってしまいます。というか、誤解を恐れずに言えば、ペーパーでは通常の3種試験ではありえないラインでの戦いとなり、面接では受け答えの修練度からして氷河期を潜り抜けた人の独壇場となることが予想されます。コネという要素がどこまで考慮されるかは不確定要素ですが、政府としても肝煎りの政策でしょうからばれて困るような無茶なことはできないでしょう。これでフリーター救済と言い張るのか、まあやらないよりはマシ、というならそうですし、もちろん資格系浪人やポスドクの人たちを救済しなくてもいいなんてこともありません。けれども、安倍首相の口から出るお話と比べてどうにも釈然としないんですが。
この超々難関試験に合格して採用された後は、3種相当とすると中央官庁での採用は少なく、地方の局等の窓口業務や事務業務等になるそうです。上司は恐らく年下で、正規3種合格者の学歴分布からして高卒が多いということになりましょうか。実務としても、上司も部下もその運用に悩みそうな制度となりそうです。とりあえず参院選がこの夏に控えているのでやってみた、今後続けるかどうかはちょっとわかりません、ということにならなければいいんですがね。
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